新撰淡海木間攫 其の五十九 鍾馗(しょうき)
かわらミュージアム館長 小森健行
かわらミュージアムに展示されている飾り瓦「鍾馗」は、江戸時代後期の文政11年(1828)に作られました。八幡瓦の元祖である寺本家の寺本仁兵衛五代目兼武とその弟・西塚宗三郎の兄弟合作の作品です。
鍾馗は、主に中国や日本の民間伝承に伝わる道教系の神。日本では、疱瘡よけや学業成就に効があるとされ、端午の節句に絵や人形を奉納したりされました。また、鍾馗の図像は魔よけの効験があるとされ、旗、屛風、掛け軸として飾ったり、屋根の上に鍾馗の像を載せたりします。
鍾馗の図像は、必ず長い髪を蓄え、中国の官人の衣装を着て剣を持ち、大きな目で何かをにらみつけている姿です。
鬼瓦(飾り瓦)は、棟の端に取り付ける飾り瓦であり、奈良時代には一般に蓮華文が用いられましたが、8世紀以降、獣面、鬼面へと変化しました。江戸時代の初めころより実にさまざまな形のものが出現しています。例えば、家を建てる際には吉相を選び、鬼門を避け、さらに鬼門の方向に向かって猿面の瓦を用いて難を避けるとか、頭巾飾りのある鬼面瓦をつけて災難を防ぐために飾られたと記されています。
この鍾馗も上述した祈願のもとで作られたものであり、今日では鬼面以外のさまざまの意匠も用いられています。