新撰 淡海木間攫

新撰淡海木間攫 其の六十五 小型横型水冷ディーゼルエンジンHB型

ヤンマーミュージアム 伊東妃李子

 これは、ヤンマーが世界で初めて小型実用化に成功した横型水冷ディーゼルエンジン「HB型」です。(出力/回転数:5─6馬力/550─650rpm、ボア×ストローク:110mm×190mm、気筒数:1、機関重量:500㎏)
 ディーゼルエンジンは、ドイツのルドルフ・ディーゼル博士により、1892年に発明され1897年にMAN社にて実用製品化されました。他のエンジンと比べ、安全で耐久性が高く、燃費がよく低質油でも使えるという経済性に優れたエンジンでしたが、当時は2階建て建物ほどの大きさがあり、扱いが難しいものでした。
 ヤンマーは当時、主に石油エンジンを扱うメーカーでしたが、創業者である山岡孫吉が、ドイツのメッセ(見本市)でディーゼルエンジンに出会い、厳しい農作業を軽減する動力源としてこれ以上のものはないと、燃費がよく耐久性に優れたディーゼルエンジンの小型実用化に取り組むことを決意しました。
 ディーゼルエンジンは、大型も小型もその原理自体は変わりませんが、燃焼条件が異なるため、小型小馬力になると技術的に大変難しく、先進国であるドイツでも商品化した例はありませんでした。しかし、「貧しい農村はもちろん、あらゆる分野においても、資源の乏しい日本では、燃料節約型のエンジンが欠かせない。近い将来石油エンジンを上回って動力機関の主役のひとつとなる。」とその将来性に確信を持っていた山岡孫吉は、小型ディーゼルエンジンの開発に熱意を注ぎました。
 開発を始めてから約1年半後の1933年(昭和8年)12月23日、世界で初めてディーゼルエンジンの小型実用化に成功しました。人力で運べるまで小型化軽量化し、始動も容易な構造としたことで、農業の籾摺り機や、灌漑用ポンプの動力源として幅広く普及が進みました。以来、小型ディーゼルエンジンは日本国内のみならず世界中のあらゆる農業・漁業・建設業の現場などで、優れた動力源として活躍しています。


※ヤンマーでは、12月23日を「ディーゼル記念日」と定めており、この小型横型水冷ディーゼルエンジンHB型を展示しているヤンマーミュージアムでは、毎年「ディーゼル記念日特別企画」を開催しています。入館料の割引や、特別イベントなどを行なっていますので、この機会に是非ご来館ください。

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