●編集部インタビュー

講演終了後、山田実さんにお話をお聞きしました。

▽(編集部)今日の講演で「石けん運動」の話が出ましたが、あの運動は敵(=合成洗剤)がはっきりしていた分、とるべき行動がわかりやすかったと思うんです。
 ところが今の環境問題は複数の問題が複雑に絡み合っていて、掌中におさまりきらない。私たちは行動する前から敗北感を感じているようなところもあるかと思うんですが。

▼確かにそうですね。その分、不安感が先行していると思います。敗北感と言われましたが、以前、産婦人科医の方が、現在言われている「少子化」について、女性の本能が「子供を産む」ことを拒否しているんじゃないかというんですね。おかしな話があって、「つるつる病」という言葉があるらしいです。赤ちゃんの肌は、本来つるつるしているのが普通なのに、いまはアトピーなど何らかの症状を持って生まれてくる子の方が多くなっている。そうなると、逆につるつるしている子の方が、おかしいんじゃないかという。そういう時代に、女性の本能が「種の滅亡」を嗅ぎ取ったとしても、あながち冗談とは言えませんね。

▽その感覚はわかるような気がします。話が悲観的になりました(笑)。
 敗北しないためにも、私たちは行動を起こさなければならないんですが、義務的な行動は長続きしないと講演の中で話されてましたね。その点、買い物の場というごく日常の場所にプロジェクトの入口を持ってこられたのは、いいと思うんです。間口が広くて、敷居がない。私たち一般市民にとって、環境のために行動するチャンスが物すごく増えるわけですから。

▼そうですね。エコナビはエコロジー・ナビゲーターであるとともにエコノミー・ナビゲーターでもあると言っているんですが、平和堂の売り場がエコノミー・ナビゲーター、つまり新しいグリーンマーケットへの水先案内人役を果たしてくれて、結果、流通業界が大きく変わればと、平和堂にもあれこれ注文を付けさせてもらっています(笑)。
 ただ現状では、実際扱っている商品の中から環境商品を選ぶだけでは数に限りが見えてきたというのが一つ。そして、既存の環境商品だけでは、ネーミングやパッケージ、おしゃれから遠い物も多くて、生活提案をするまでに至らないという問題点があると思います。

 ですから、プロジェクトのパートナーを平和堂にだけ頼るのではなく、もっと海外の商品やオリジナルブランドの開発にも目を向けて、うちでやってみたいという人がいればオーナー制でグリーンショップを展開するという方向も考えたいと思っています。商品を個々にアピールするより、キッチン、洗濯、掃除、育児とライフシーンごとにおしゃれな暮らしを提案していきたいですね。それこそ流し台や洗濯機といったハードから、雑貨などのソフトまでです。

▽「おしゃれ」という言葉の定義は、時代とともに変わりますよね。これからはエコロジーな暮らしがおしゃれ、「地球と一緒」みたいなフレーズでしょうか。
 紙面の都合で最後になりますが、私がもう一つ注目しているのは、ETプロジェクトにはゲーム的要素が多く含まれているということです。これは、山田さんの普段の遊び方が反映されていますか?

▼うーん。そういう部分もあるでしょうね。ホームページの1日のアクセス数が100を超えたら、プロジェクトの名前はトルネードから「タイフーン」に変わりますとか、エンタープライズは「スタートレック」というSF映画に出てくる宇宙船の名前ですとか。実はトルネードも講演では野茂投手のトルネード投法を例にあげましたが、本当は僕ら世代のTVヒーローがまたがっていた馬が「トルネード」という名前で、トルネードは正義の味方のパートナーというわけです。そういう遊び心を持ちながら、このムーヴメントを進めていきたいと考えています。

▽どうもありがとうございました。

(構成/編集部)

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