惟喬親王伝説を旅する
B5 382ページ 並製
ISBN978-4-88325-708-9 C0039
奥付の初版発行年月:2020年11月
書店発売日:2020年12月07日
品切
文徳天皇の第一皇子でありながら、皇位につけなかった惟喬親王は、近江の小椋谷に隠棲し、木材を円形に加工するロクロ技術を杣人に伝授したとする伝承が生まれ、椀や盆をつくる木地師の祖神として崇められてきた。この「伝説」に魅了された著者は、滋賀県はもとより、京都・大阪に残る惟喬親王の事績、石川県・福島県にも残る伝承地を訪れ、関係者に話を聞く作業を続けてきた。日本工芸館機関誌『日本の民藝』連載「惟喬親王伝説を追う」12年分を加筆訂正のうえ単行本化。
「惟喬親王伝説」を追い続けた十二年間
Ⅰ 滋賀県──鈴鹿奥地へつづく親王の「旅」
Ⅱ 京都府──親王が探し求めた安息の地
Ⅲ 三重県・奈良県・神奈川県──親王伝説のもつ多様性
Ⅳ 大阪府──文学と古跡から親王の姿を探す
Ⅴ 石川県・福井県・福島県──木地師の祖として祀られる親王
Ⅵ 田中長嶺『小野宮御偉績考』を読む──明治期に書かれた親王伝記
Ⅶ 惟喬親王『御縁起』を読む──親王像の形成過程を求めて
あとがき
平成二十年からこんにち(令和二年)まで、私はわが郷土に芽生え、広く全国各地に刻まれていった惟喬親王伝説を、それこそ夢中で追い求めてきた。それは、伝説のもつ不思議さに魅了された日々であった。惟喬親王の話をつたえる土地を自分の足でじっさいに訪ね、その土地の方々から直接お話を聞き、何冊かのノートをメモで埋め尽くす。私にとってそれは愉しく、充実した時間であった。
惟喬親王は、歴史上の実在人物である。しかし、日本史に登場する多くの英雄たちと比べれば、親王の知名度は低い。聞き慣れない「惟喬」という親王の名前に、首をかしげる人も多いことだろう。
わが国には「弘法大師伝説」「聖徳太子伝説」「義経伝説」などなど、さまざまな伝説があるが、惟喬親王の伝説はじつに地味である。しかし、その広がりや深さについて考えると、わが国に語りつがれてきた伝説のなかで、まさに第一級のものといいえるのではないか。
昭和9年(1934)生まれ。野々宮神社宮司。八日市市職員、八日市市史編さん室長、滋賀県総務課嘱託職員などを務める。元八日市郷土文化研究会会長、東近江戦争遺跡の会世話役。
主な著書に、『鈴鹿霊仙山の伝説と歴史』、『翦風号が空を飛んだ日』(朝日ジャーナル・ノンフィクション賞受賞)、『近江鈴鹿の鉱山の歴史』、『陸軍八日市飛行場 ─戦後70年の証言─』がある。
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