近江日野商人の歴史と商法

近江日野商人の歴史と商法 近江商人400年の奔流

満田 良順
A5判 386ページ 上製
ISBN978-4-88325-731-7 C0021
奥付の初版発行年月:2021年10月
書店発売日:2021年10月08日
在庫あり
6000円+税

内容紹介

「三方よし」という言葉が近年有名になり、近江商人すなわち三方よしというとらえ方をされるが、近江から他国に出かけ、やがて各地で店を持ち他国で商いを展開した近江商人は、その発祥地により、活躍した時代や取り扱った商品が大きく異なる。本書では、近江商人の中でもとりわけその人数が多く出店数も格段に多い日野商人の実態を詳述したものである。これまで、蒲生氏郷起源説や製薬起源説が有力視されてきたが、日野椀の歴史を中心に商人が誕生し全国にその活躍の場を見出したことを主張している。著者が館長を務める近江日野商人館には多くの情報が集まり、著者の懸命の調査結果が凝縮された本書は、日野商人の実態に迫り、これまでの定説を覆すべしとの迫力あふれる良書。

目次

序章 近江日野商人の研究史
1章 近江日野商人の登場と日野椀
2章 近江商人と合薬
3章 行商と出店経営
4章 商人組合「日野大当番仲間」
5章 経営理念と陰徳善事
終章 近江日野商人四百年の歴史、近江日野商人の特性と商法
巻末史料 日野大当番仲間商人/近江日野商人の出店一覧/近江商人の出店一覧/日野大当番仲間の定宿/初代中井源左衛門の寛政四年の「金を持一枚起證文」

前書きなど

近年とみに注目される近江商人は、近江の限られた地域から生まれ、それぞれが地域の特性、歴史的背景などによってその商法は大きく異なる。残された史料からその実態が次第に明らかになってはきているが、まだまだ解明されていない部分も多い。
 本書では、滋賀県蒲生郡日野町の町史編纂の過程で多く収集された各地の日野商人の実態調査や史料ととも、「近江日野商人館」館長を務める著者の緻密な調査結果が集積されて、近江商人の中でも最も多くの商人が生まれその痕跡が残る日野商人の実態を詳述している。
 これまで、日野商人の登場については、蒲生氏郷起原説や製薬起原説が日野商人発祥の通説となっていたが、2002年から始まった平成の『近江日野の歴史』の編さん事業によって、日野商人関係の数万点にも及ぶ膨大な史・資料が全国から新たに発掘されたことで、日野椀の歴史のみならず、日野商人の歴史も急速に明らかになってきた。(中略)日野商人が数百年前から培ってきた様々な商法や理念には、現経済界の源流的な要素が多く認められることが判明し、他の近江商人の歴史的実態をはるかに凌ぐ豊かな内容を持っていたことが解明されてきたので、本書の副題に「近江商人400年の奔流」と明記した。
 近年の日野商人の研究は、商人個々の出店の経営史が中心で、日野商人が登場してきた歴史的背景や、持ち下り商品の歴史的実態、商人組合「日野大当番仲間」が組織された背景などについては、これまでの通説を踏襲しているのが現状である。本書では、明治期以来、人々に語られ、信じられ、定説化されてきた日野商人の全体史を再吟味し、新たな日野商人史を提起した。日野商人の登場背景、諸国に持ち下った日野椀や日野合薬の歴史的実態、醸造業中心の関東出店を展開させた理由、また、日野商人のみが商人仲間を組織し得た歴史的理由、実態、変遷などを再吟味し、日野商人に共通する歴史的特性を探りながら、日野商人や八幡商人が江戸時代初期から広域的な商い活動を展開し得た理由に迫りたいのが、本書の究極のねらいである。

著者プロフィール

満田 良順(ミツダ リョウジュン)

1946年滋賀県蒲生郡日野町生。1973年大谷大学大学院修士課程修了。1972年~2006年まで滋賀県内の公立学校に勤務。滋賀県蒲生町(現東近江市)町史執筆委員、蒲生郡日野町町史編纂・編集委員を歴任。1976年より日野町文化財保護委員、現在に至る。教職退職後の2007年より近江日野商人館館長、現在に至る。

   

コメントはまだありません

コメントはまだありません。

この投稿へのコメントの RSS フィード。

所属シリーズ・ジャンル

中世史・近世史近江商人郷土史・民俗文化
ページの上部へ