やってよかった集落営農

やってよかった集落営農 ホンネで語る実践20年のノウハウ

上田 栄一
A5判 136ページ 並製
ISBN978-4-88325-510-8 C0061
奥付の初版発行年月:2013年05月
書店発売日:2013年05月30日
在庫あり
1500円+税

内容紹介

先祖伝来の水田を維持するのに苦慮している農家、高齢者任せにして農業はきつい仕事と思っている農家必見!20年前にいち早く集落営農組合を立ち上げ、6年前には法人化して、現在は米以外にハウスでトマトやイチジク栽培も行う著者が、その経緯や方法を具台的に解説。元農業改良普及指導員がホンネで語る成功のポイントとは。「集落営農試案」の様式も収録。

目次

1 集落営農とは?
1-1 少人数で集落の農地を維持管理するしくみづくり
1-2 個人完結の農業はもう限界を超えている
1-3 農業の合理化だけが目標ではない
1-4 明るく住みやすい村づくり
1-5 若い人が中心になって検討しよう
1-6 先進地研修に行ってみよう
1-7 困っていることを全員で確認しよう
1-8 集落営農をやるべきか、やらざるべきか
1-9 そもそも零細な水田農業は農業経営?
1-10 集落営農は経営体か?
2 大きく変化した農村の現状
2-1 高齢化社会にこそ集落営農が必要
2-2 不便な田舎の暮らし
2-3 儲からない農業でも集落は人材の宝庫
2-4 困難を極める獣害対策も集落営農から
2-5 農地の圃場整備はやはり必要
2-6 専業農家地帯こそ集落営農を
2-7 転作でも確実に儲けにつなげよう
3 法養寺営農組合の場合
3-1 農業組合から営農組合へ
3-2 発足当初に所有していた機械
3-3 積立金で次回の機械更新を
3-4 法養寺方式の特徴
3-5 機械の更新を見据えた長期計画
4 集落営農のメリット
4-1 具体的なメリット6項目
5 集落営農設立のポイント
5-1 組織設立までのポイント
5-2 設立当初のポイント
5-3 絶対に個人所有機械の更新はさせない
5-4 集落営農リーダーの役割
5-5 発足当初の施設機械導入の考え方
5-6 指導機関への注文
6集落営農試案の作成様式
6-1 集落営農試案様式を使ってみよう
6-2 入力の方法
6-3 入力に当たっての注意点
6-4 最初から広範な取り組みをしないこと
6-5 集落営農と認定農業者の関係
7 農事組合法人サンファーム法養寺への発展
7-1 法人化する理由
7-2 法人化の方法
7-3 集落営農や法人化のメリットは?
7-4 法人化後の経営展開
7-5 法人化して何が良かったのか?
7-6 任意組合と法人はどう違うか?
7-7 集落営農が施設園芸を付加した特徴と注意点
8 甲良集落営農連合協同組合の設立
8-1 なぜ協同組合の設立なのか
8-2 特徴ある米生産の追求
8-3 販路の検討
8-4 栽培方式の統一
8-5 協同組合という法人にしたのは
8-6 バイオ炭の効果
8-7 さあ集落営農を始めよう!

前書きなど

まえがき
 前著『みんなで楽しく集落営農』を出版して19年が経過し、多くの人に読んでいただきました。
 私の住む集落、滋賀県犬上郡甲良町法養寺に視察に来ていただいたり、全国に講演に出向いたりした回数は、合計で1,000回を超えたのではないかと思います。これは決して自慢話ではなく、日本中で「我が家の農業を維持するのに困っている農家」がいかにたくさんあるのかということなのです。
 もはや「零細農家の個人完結農業の時代は限界を超えてしまった」のです。
 集落営農を実践して21年が経過しました。この間、法養寺の農家は個人で農業機械を買うことはありませんでしたし、重労働にかり出されることもありませんでした。我が家で農機具を維持管理することも格納する必要もありませんでした。法人化してからは水田の全面受託も引き受け、集落のすべての水田では稲作か集団転作の小麦や大豆が栽培され遊休農地は全くありません。家庭の事情で農業ができなくなっても何の心配もありません。本当に「集落営農をやって良かった」というのが実感です。
 さらに法人化してからハウス園芸にも取り組み、当初の「儲からないけど損をしない農業を」という守りの発想から、今では「攻めの農業」に発展しています。従事者は農業の好きな仲良し5人が毎日楽しく農作業に励んでいます。儲からない農業のなかにあっても、わずかながらも収益を分配しています。
 毎日が楽しいし、やりがいを感じています。バイオ炭(土壌改良資材としての炭)を使った農作物栽培に取り組んでからは「味がよい」と大好評で、消費者の方々に大変受けていて、私たちのモチベーション向上にもつながっています。さらに新たな農産物生産にも挑戦したいと考えています。
 ほとんどの集落で集落営農組織ができている甲良町で「甲良集落営農連合協同組合」という法人を設立して米の有利販売に取り組んでいます。一つの組織ではたいしたことはできませんが、7組織が結集すると大型スーパーとも交渉ができます。併せて甲良町内の集落がより連携を強化し情報交換が広がっていますが、そのことで仲間の輪が拡大していることも楽しいことです。このような仲間で「園芸生産に挑戦!」という気運も高まってきて楽しみがますます拡大していきそうです。
 滋賀、富山、島根など集落営農が進んでいる県がある反面、まだまだこれからという県がほとんどです。園芸や果樹などの専業農家地域でも基本的に水田がありますが、せっかく稼いだ農業収入を稲作の機械に投入していたのでは、決して「強い農業」につなげることはできません。私は、日本全国どこでも集落営農を実現しなければ、将来の農業はあり得ないと思っています。
 ほとんどの農家は「このままではいけない、何とかしなければ」と思っているのですが、かといって集落内の合意形成は容易には進みません。その理由は、現在個々が所有する機械をどうするのか、大金を要する初期投資をどうするのか、はたして経営はうまくいくのか、など不確定な要素が多すぎるからなのです。
 本書は、20年を超える集落営農の実践をもとに、その経緯や集落営農実践の方法論をできるだけ具体的に示して、日本全国の「我が家の田を維持するのに困っている農家」の皆さんに参考にしていただきたいという思いで書き上げました。その一部は私が普及指導員としての現職時代に、全国の普及指導員の皆さんに参考にしていただけたらという思いで、「EKシステム」に投稿したものです。
「集落営農を実践して本当に良かった!」と思っていますが、ぜひ多くの皆さんにも体験していただきたいのです。そして単なる「先祖伝来の水田の維持管理」に留まらず、集落のみんなで前向きで楽しい農業へと発展させることです。併せて「明るく住みやすい村づくり」にもつなげ、若い人が喜んで村に居つき、進んで農業に参画してもらうことが集落営農の本当の目的だと思います。

著者プロフィール

上田 栄一(ウエダ エイイチ)

1951年 滋賀県犬上郡甲良町法養寺生まれ
1973年 滋賀県立短期大学農業部卒業、滋賀県農業改良普及員に採用
1989年 専門技術員(乳牛)
1991年 地域窓口担当として「集落営農指導」に従事
1992年 「法養寺営農組合」発足
1994年 『みんなで楽しく集落営農』出版(絶版)
2001年 農業試験場湖北分場長:獣害の試験研究
2005年 法養寺営農組合を法人化、代表理事就任
2006年 農業技術振興センター普及部長
2009年 定年まで3年を余して退職
現在 サンファーム法養寺理事として毎日農作業に従事。

   

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