特集「近江巡礼 祈りの至宝展」ができるまで

佐々木千春 毎日新聞大阪本社 総合事業局事業部
佐々木千春さん
上野良信 滋賀県立琵琶湖文化館 学芸員
上野良信さん
井上ひろ美 滋賀県立琵琶湖文化館 主任
井上ひろ美さん

日通の社員さんが、「琵琶湖文化館さんは、すごいものばかり持っています」と

──本日は、全国3館で行われる巡回展「近江巡礼 祈りの至宝展」について、企画の段階から携わっておられる毎日新聞社の佐々木千春さん、そして琵琶湖文化館の井上主任、上野学芸員のお三方にお話をうかがいます。

 まず巡回展のお話の前に、新聞社の文化事業部とは、何をするところか、一般にはあまり知られていないと思うのですが。

佐々木 新聞社は、大きくは記者部門と営業・管理部門の二つに分かれ、事業部は販売、広告、経理などとともに後者に属します。展覧会だけでなくて、スポーツや音楽イベントなど、新聞社が後援、あるいは主催につくイベント事業を担当している部署です。

──では、新卒採用でもかなり人気があるのでは。

佐々木 人気です。営業・管理部門への希望者の8割ぐらいが事業部に集中します。

──佐々木さんは、どういった分野を希望なさっていたのですか。

佐々木 私は平成16年(2004)秋に入社して、最初から美術館・博物館などでの展覧会です。学生時代には近世絵画を専攻し、長谷川等伯を勉強していました。それで、毎日新聞が平成22年(2010)に長谷川等伯展をやると知って受けたわけです。

──えっ、入社時から6年も先ですが、どこから情報を。

佐々木 10年越しの展覧会でしたから、私がアルバイトで上野の東京国立博物館に勤めていた頃、耳にしまして。もともとは美術館の学芸員をめざしていましたが、募集は非常に少なく、難しい時代になっていましたので……。

──別の職業で関われる道を見つけられた。その長谷川等伯展も、こちら琵琶湖文化館との関わりがあったそうですね。

佐々木 はい、そうです。

上野 『花鳥図屛風』ですね。個人の方が寄託なさっている作品です。画自体に「等伯」という名前は入っていないので、作者はわからなかったのですが、優れた作品として、当館では常設で展示していたんです。それが等伯展担当の学芸員の目にとまり、本格的に調査されたんです。
 等伯の割と早い時期の作品だというようなことがわかりだして、等伯展の、いわば目玉といえるものになりました。

佐々木 そうです。長谷川等伯の40歳前後の作品であると、その展覧会で認定したかたちです。展覧会の始まる前に新発見の作品だということが、新聞紙面でも報道されました。

──以前当誌で琵琶湖文化館を特集させていただいた際(97号、2007年)知りましたが、文化館は、近世絵画が、かなり充実している館でもあります。館蔵品の中には、判明していないだけで、まだまだすごい作品があるかもしれない。

井上 あるかも(笑)。研究は将来ずっと進んでいくものなので、いまの段階で判定していなくても、今後わかってくることもあるかと思います。

上野 今度の「近江巡礼」展に出るものでは、曾我蕭白の「楼閣山水図」(近江神宮所蔵)という重要文化財に指定されている作品があります。これなども、当館が昭和36年(1961)に開館した頃からずっとお預かりしているもので、たびたび展示はしていたのですが、世間の目にはなかなかとまりませんでした。それが最近になって、蕭白が俄然注目され出して。

──「奇想の画家」というくくりで注目されるようになりましたからね。

上野 平成4年(1992)には重要文化財に指定され、もう引っ張りだこみたいな感じになっています。

──お話を戻して、佐々木さんと、こちらの文化館との関わりを見ていきますと、等伯展から、どうつながっているのですか。

佐々木 長谷川等伯の作品返却の際に輸送業者である日本通運関西美術品支店の社員さんから、「佐々木さん、巡回展に興味ないですか。琵琶湖文化館さんは、すごいものばかり持っています。休館はしているけれども、本当に寄託品も館蔵品もすごいものばかりですよ」と言われまして。

──実際に美術品を運んでいる人から。

佐々木 そうです。そんなことって、まずないですよ。「どうして知っているの?」と尋ねたら、「これから九州国立博物館で展覧会をやるんです。僕らは、その梱包のお手伝いをしています」とのことでした。年間で実物にふれている回数は、彼らの方が断然上ですから、目は確かなはずです。それに、新しくできたばかりの九博が注目した。しかも博物館・美術館1館だけの収蔵品で展覧会が成り立つなんて、本当に稀なことです。
 実際、九博へ行って拝見すると、すばらしかったです。それは仏教美術に特化した展覧会でしたが、国宝や重要文化財が数多く並んでいて。
 このレベルのものを新聞社主催の巡回展でもできたら、すごいことになると思い、アポイントメントを取って、お話をうかがったのが始まりです。その段階でザッとした企画書は持っていきました。

──その段階の企画書で、今回の近江巡礼展の内容はほぼ固まっていたのですか。

佐々木 当初の企画の段階では、私は仏教美術だけの展覧会を考えていました。
 すると、井上さんから、いや、当館には近世絵画もかなりあって、これこれの作品、これこれの作品と、資料を見せられました。そういうことなら、九博で一度やった展覧会をそのまま継承するのはもったいない。仏教美術と近世絵画と両方あった方がより多くの方々が楽しめるでしょうし。そうしたやりとりをする中で、最終的な形に企画の内容を変更していきました。

3館とも、ひと月以内の即答で、これほど楽しいことはなかった

──社内で企画書を出されて反応はいかがでしたか。

佐々木 すごくよかったです。例えば長谷川等伯や狩野永徳といった一作家でも、一つの企画をつくるのに5年から10年かかります。借用先も50〜60カ所にわたり、例えば、借用先の一つのお寺さんが自前の宝物館で公開なさっているような場合、「いや、うちはこの時期にこれがないと困る」とおっしゃり、それを何年もかけて説得するといったことがあるんです。

──所蔵先ごとのスケジュール調整が難しいわけですね。

佐々木 ですから、いま、地方の公立館で仏教美術の、しかも国宝や重要文化財が並ぶ展覧会を開催するとなると、ものすごいお金と時間がかかります。まして巡回展という、言葉は悪いですが、展覧会のパックで、その中に国宝が入っています、重文が入っています、というものは普通ありえません。社内では、かえって「大丈夫なの。本当に実現させてもらえるの」と心配する声もありました。

──そんなおいしい話があるのかと。

佐々木 メリットでいえば、所蔵者さんとの交渉においても、私ども新聞社だけで「展覧会をしたい」とうかがっても難しい面があるのですが、寄託先の学芸員さんから、「こういう企画で、こういう手順で」と説明いただき、「もちろん、その展覧会には自分も必ずついて回って、展示の指導もします」とお話しいただくと、スムーズに進みます。それらがおおよそ決まった段階で、展示していただく各館に諮りました。

──それがいつごろですか。

井上 平成22年の11月に企画書を持ってきてくださっているんですよ。じゃあ、やりましょうとなって、23年度に入ると、およその出品リストをつくり始めました。

──その時点では開催館はまだ決まっていないんですか。

井上 まだ決まっていません。どういうものが来るか、出品リストがないことには、開催館側は判断できませんから。そのためのリストづくりですが、最初からしぼるといろいろ不都合が出てくるので、かなり余裕を持たせたリストをつくります。
 それで開催を決めた館の側から、自館の性格や活動内容に合わせて、「どうしてもこれを追加したい」、「申し訳ないが、これは結構です」といった希望が出されて、調整されます。

──開催館はどのように。

井上 九州地方を除いた地域で、毎日新聞社さんから声をかけてもらいました。

佐々木 3館ともひと月以内で即答でした。お声掛けして、これほど楽しいことはなかったです。こんなことはとても珍しくて、だいたい早くてひと月、遅いと半年ぐらい待たされるんです。それぞれの館で年間の予算が決まっていますので、弊社からご提案しても、他のラインナップが決まらないと、予算立てができませんから。だいぶ待たされて、その間に他の新聞社からの企画を気に入って、そっちにということもあるでしょうし。

 特に島根県立古代出雲歴史博物館は、以前から自分のところでぜひ琵琶湖文化館収蔵品の展覧会をしたいと思っておられたそうです。けれど、実現するにはすごく予算がかかる。単独企画ではとても無理だとお考えだったところに、今回の巡回展をご提案したものですから、「うちは絶対やります」というご返事を最初にいただきました。

──それ以前にも、出雲とは何か関わりがあったのですか。

井上 はい。平成19年にオープンをした新しい博物館ですが、平成22年、23年の2年続けて、当館から作品をお貸ししているんですよ。

上野 重文の絵画ですね。

井上 立地からしても、出雲大社の横にあって、神道美術を一つの活動テーマにされており、当館との共通性もありますので。

──なるほど。静岡市美術館の場合は、田中豊稲館長が毎日新聞社のOBの方だそうですが。

佐々木 そうです。あちらも平成22年にオープンした新しい館です。文化庁のOKもいただいて、国宝や重要文化財を展示できる施設ではあるのですが、まだそれほど実績がなかったので、ちょうどよいタイミングだったと思います。

──そして、もう一つが仙台市博物館。この館が決まったのは、東日本大震災より前ですか、後ですか。

井上 会場が決まったのは、前ですね。実際に動きだそうとしている時に震災が起こったんです。それぞれ所有者さんにお願いにうかがったのは、地震発生後だったのですが、どこも、「大丈夫か」とか「不安だから、出品をひかえたい」といったことは、一切おっしゃらなかったです。むしろ、「お役に立てるのであれば」というようなことを言ってくださる所が多くて。

 お寺さんや神社さんは、ある意味、公共性を持った組織で、社会的に果たさなければいけない役割の中に慈善事業を意識されていて、被災地で仏像などを公開することもそうした一環ととらえておられる方もおられました。

──それは、ありがたいですね。タイトルの「近江巡礼 祈りの至宝展」に、「巡礼」、「祈り」といった語が使われているのは、震災からの復興に向けた願いも込められたのですか。

佐々木 仙台の場合はそれがありますし、出雲は神々のいるまちであること。静岡は新しい館で、これから発展していくという祈りも込めています。3館それぞれの気持ちが込められた語といえます。

文化庁から許可がもらえたのは、これまでの経験と信用の積み重ねのおかげ

──館が決まると、次はどんな作業になるのですか。

佐々木 巡回館が決まると、会場館の学芸員の皆さんに一度琵琶湖文化館にお集まりいただきました。最初のリストが割に余裕を持たせたリストだったので、3館の希望を調整して、これを出す、あれは出さない。うちのスペースでは、これ以上入らないからといった意見を聞きます。

井上 最終的な判断は当館ですが、巡回館との間の調整は全部、毎日新聞社さんがなさいます。

佐々木 今回は図録もつくっているので、その製作も進めます。新聞社の事業部員の仕事は、所蔵者さんとの間、学芸員さんとの間をつなぐ媒体役が多いですね。

 図録執筆や展示解説には、作品の調査が必要になってくるので、何日間か琵琶湖文化館にみんなが集まりました。そこで図録の執筆分担も相談しました。

 この時期には、原稿を集めて、印刷会社とやりとりしてといった出版社のような仕事もします。他には、輸送業者はどうしますか。保険はどうしましょうかとか、契約関係もすべてこちらですね。

井上 特に今回は指定品が多いので、文化庁に相談する必要があり、佐々木さんにも同行していただきましたね。移動方法は何で、誰がついていって、こういう体制でやりますといったことを、細かく細かく文化庁とやりとりをしました。

──国宝・重文を含む巡回展だと、何を求められるのですか。

井上 安全に輸送して、展示・公開して、最後まで持って帰ることができるという体制です。また、作品に負担をかけないことが基本ですから、国宝、重要文化財は最大60日間しか公開できません。それを守ったスケジュールの割り振りなど、いろいろ文化庁と相談するんです。こういった巡回展で、これだけ指定品が出る展覧会が本当にないので、文化庁側は、そう簡単に「よろしい」とはおっしゃらない。

──巡回展でこれだけの数の重要文化財が出るのは珍しいのですか。

井上 そうなんです。他館に持って行く巡回展で、これだけの数の指定品が出るというのは珍しいです。

佐々木 ないですね。

──ないですか。

井上 本当にないです(笑)。だから、複数の人から聞かれたんですよ。「どうやって、これだけ指定品のある展覧会を文化庁さんからOKを取ったのか」と。

──休館しているから、ちょっとかわいそうだしなとか。

佐々木 いや(笑)、それはありません。

井上 そういう同情論では無理です。当館の経験と信用の積み重ねからだと思います。ちょうど平成23年12月から翌年2月にかけて韓国国立中央博物館で開催された展覧会で、文化庁と一緒にお仕事をさせていただいたことも大きかったのではないかと。

──そうでした。あれは文化庁の「海外古美術展」として開催されたんでしたね。

井上 要するに、事前に当館の働きぶりを、ちゃんと把握してくださっていたのと、作品の状態も、ご存じのものがあったので、すんなり進めたのだと思います。それは本当にありがたいことでした。

佐々木 今回、「どうしてうちに声をかけてくれなかったの」とおっしゃる館もあり、もっと巡回館の数を増やしたかったぐらいなのですが、文化庁や所蔵者さんにOKをいただくには、3会場が限界だろうということで、今回はひかえました。

 こうした巡回展に対するニーズは非常にあります。1館単独でやるには、予算がかかりすぎますので。

井上 仏教美術などを扱おうとすると、通常の倍以上、どうしてもかかってしまう。

──何が違うんですか。

井上 輸送にかかる手間や材料代もろもろ。

佐々木 入れる木箱からつくるんですよ。

井上 立体物の場合、ものすごく大きい箱が必要で。

──一つずつ特注なのですか。

井上 そうです。それぞれの大きさと形に合わせてつくってもらうので。

佐々木 軸などは、くるくると巻いて箱に入れてしまえば、割に問題ないのですが。立体は重ね置きもできず、仮に4tトラックなら、その荷台の面積だけにスペースが限定されます。

井上 うまく考えて、4tトラック2台なら2台で収まる梱包量になるようにしていくんです。

──すごい手間ですね。向こうへ行って、無事終わって帰ってくるまでは心配だし。

井上 はい、本当にそうです。

佐々木 展示のときも、撤収のときも、文化館の学芸員さんに必ずついてもらって、状態を確認してというのは必要なんです。

井上 だから、展覧会ってチームなんですよ。私たちだけではできないし、私たちと毎日新聞社さんだけでもできなくて、相手の会場の館の人、輸送に携わる人、皆が同じ方向を向いて動かないと、最終的に一番リスクを負うのは、文化財自体なので。

出品資料の輸送

ポスターやチラシ、展示の仕方に各館のカラーが出ていておもしろい

──3館のうち、静岡は終了しましたが。

佐々木 はい。市の美術館でこうした内容の展覧会が行われたというのは、実績としても、認知度の面でも大きかったようです。その後、国宝や重要文化財が展示できるような企画が続いていますので、彼らの祈りは通じたというか。

井上 これまでは静岡県内で、こういう内容の展覧会はあまりなく、県民の間にも待望感があったそうです。

──そして、いま仙台展が準備中(インタビュー時)ということですね。

井上 仙台市博物館は、3館の中では一番歴史がある老舗の博物館になります。古い美術品も普段から展示されており、仙台藩の大名家関係など、バラエティに富んだ企画展をなさる、とても実力のある館ですから、チラシも安定感のある、やっぱり老舗らしいものが出来上がりました。

──チラシに使われている2点は、結構オリエンタルなイメージがありますね。

井上 静岡のチラシはポップな要素もあるデザインでしたから、全然印象が違いますよね。ポスターやチラシは各館でおつくりになるので、館ごとのカラーが出ていて、おもしろいです。それから仙台は政令指定都市なので、広報ツールがすごく充実しています。実行委員会が放送局や新聞社で構成されて、テレビCMなども流してもらっているんです。世界遺産・平泉のイメージソングなども手がけているミュージシャン、姫神さんによるテーマ曲もつくられていて。

──それは、力が入っていますね。

井上 たぶんどこの巡回展もそうだと思うのですが、出る作品はほぼ同じでも、それが各会場館のもともと持っているカラーと、どういうふうにマッチングして、どういうふうに表現されるかで違いが出ます。

──それは展示の仕方についてもですね。

井上 そういう意味では面白いと思いますよ。静岡市美術館は新しいもの、いわゆる現代美術を中心に公開しておられる館ですので、そういうところで、古いものを展示するとどうなるか、勉強させてもらったところがあります。

 仙台さんの場合は、オーソドックスな老舗なので、そこで展示すると、どういうふうになるのか。最後の出雲さんも新しくて、展示方法や照明がこったものになると思うので、それも楽しみですね。

──先ほど、展覧会の目玉の一つになった、曾我蕭白の作品のことがお話に出ましたが、他に来館者が注目した作品というと。

井上 蕭白以外に、伊藤若冲の作品「鳥禽図」も実物が外で展示される機会がほとんどなかったもので、これ狙いの方もいらっしゃいます。今回留意したのは、これまであまり外に出ていないものを見ていただくことでした。例えば修理後初公開のものや、九博でも韓国でも出ていない、新しい要素を出すようにしました。九博も韓国も行かれた方でも、「こんなの見たことない」とおっしゃっていただけるよう。

 それから文化館の収蔵品に対する驚きだけではなく、滋賀県が文化財の宝庫だという、本当にベーシックな部分に対して驚きを持って迎えてくれた入場者もたくさんおられましたし。

──すると、佐々木さんにとっても驚きがあったんですか。これは初めて見たとか。

佐々木 ありましたね。今回展示される海北友松の屛風「東王父西王母図」にしても、存在は知っていましたが、実際に見るのは初めてでしたし、驚きの連続でした。

 休館した後で、九博が決まり、韓国での文化庁の展覧会が決まり、東京都心の三井記念美術館さんでも展覧会があり、今回の巡回展と、本当に精力的に活動しておられます。たぶん文化館さんは、すごい忙しいんですよ。休館していながら。

上野 そう、休館してからの方が忙しい。

井上 でも、そのおかげで、いろんな人と出会えて、いろんな人に見ていただけて、すごく活動の幅が広がったように思います。

佐々木 全国の館が、自分のところに声がかかるのを待っているんですよ。先日もアメリカの博物館の学芸員さんと話す機会があったのですが、琵琶湖文化館の展覧会は、どうやってつくったのと聞かれました。海外の方が注目するぐらいですから。

井上 自分で言うのもおかしいですが、県外、国外に対するPR貢献度という点では、滋賀県の施設で当館が一番がんばっているかもしれません。地域の魅力を発信するという面で、私はひそかに収蔵品を「観光大使」と呼んだりもするんです。実物の持っている迫力というのは何ものにも代えがたいものがありますので。

──7月に入ると梱包作業が始まるようですが、上野さんもまだ力仕事をなさるんですか。

上野 他におりませんから。その技術の継承も手遅れにならないうちに考えてもらわなければいけない問題です。

──本日はお忙しいところ、興味深いお話をありがとうございました。
(2013.6.10)


編集後記

 校正の打ち合わせに琵琶湖文化館へうかがった7月上旬、ちょうど仙台市博物館の酒井昌一郎学芸員が搬出作業のため来館しておられました。「あるのが当たり前になってしまうと、あることのありがたさが忘れられてしまいます。ほっておけばなくなっていたかもしれない文化財を50年以上守ってこられた文化館の活動は本当にすばらしい」と酒井さん。
(キ)

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