[ヤンマーテラス] リニューアル前の水の入れ替え時に魚をいったん取り出したところ、2000匹以上のメダカがいました。 ヤンマー株式会社 総務部 ヤンマーミュージアム 伊東妃李子さん

──本誌では、2013年のオープン時にもビオトープを取材させていただきました。

伊東 屋上のビオトープは、今回のリニューアルでも基本的にまったく変わっていません。追加したものとして、QRコードの札を設置して、貸し出しているタブレットで、見ることができる生き物の情報を得ることができるようになりました。かざすと……(ピコーンという音)来ました。このように生き物の情報が表示されます。

ビオトープ内のあちこちに立っているQRコードを専用タブレットで読み取ると、生き物の解説が表示される。下写真のオニヤンマはまだ未確認

──どんな生き物が増えましたか?

伊東 オープン当初は芝生のような短い草ばかりだったと思いますが、それらが伸びて、新たにサギソウという植物と琵琶湖のヨシも植栽しました。

 池の中にも、いまは魚だとメダカとドジョウとニゴロブナがいます。あっ、いま動いた。このモニョモニョとした跡がドジョウがつけたものですね。あそこにメダカもいますね。

ビオトープの池で泳ぐメダカ。環境省は絶滅危惧種に、滋賀県は絶滅危機増大種に指定

──在来種の、もともと長浜にいる魚たちですね。

伊東 メダカは私が、休館日に網を持って長靴を履いて、捕りにいきました(笑)。村上宣雄先生(滋賀ビオトープ研究会副会長)と長浜市内の某所へ行って。それを放流して、増えた子たちです。ドジョウも長浜市高橋町(長浜バイオ大学の北)で捕ってきたものを放して増えました。その後、彦根市にある滋賀県水産試験場さんからニゴロブナの稚魚をいただいて放流しました。

 魚類はその3種で、それ以外の生き物は勝手に飛んできて増えていっています。トンボのヤゴなどもたくさんいます。トンボは4〜5種類。ギンヤンマとかアカトンボ。

池の中には、冬場に越冬するヤゴも多いんですよ。ヤゴはメダカをエサにしています。

──池の中のモアモアした藻は?

伊東 アオミドロです。

──田んぼなどでも見る藻ですね。

伊東 これがあると汚く見えちゃうんですけど、よいものなんです。植物プランクトンの一種で、これがあるからこそ、ミジンコなどの動物プランクトンも増えるし、メダカが隠れたり、卵を産みつける場所に使ったりもするので。

 初めて来た方の中には、管理が行き届いてないようにお思いになる方もいらっしゃるかもしれないですが、必要なものです。顕微鏡で見るととてもきれいなので、リニューアル前にはプランクトン観察会なども催していました。

──その中をメダカの群れが泳いでいます。

伊東 リニューアル前に一度池の水の入れ替えをおこなって、魚などをいったん取り出したのですが、2000匹以上という大量のメダカがいました。

 冬には雪で埋まってしまうので、メダカも少しは死んでいるはずなんですが、また春になるといっぱいいますね。産卵のシーズンだと、お腹に卵をつけている状態のメダカを観察できたり、小さなお子さんにもすごく気軽に見てもらえる場所というのは、なかなかないと思います。

──鳥による被害などはないのですか?

伊東 被害というのか、鳥は普通に来ます。よくサギなどがゆうゆうとここを歩いたりしています。ただ、賢いので自動ドアが開くと、バッと飛び立ってしまいます。ですから、たまには半分食べられたドジョウが浮いていたりします。それでも、地上よりはかなり被害が少ないですし、外来種などが侵入するおそれもありませんので、かなり守られた空間だということはできます。ザリガニに食べられたとか、ブラックバスが増えちゃったということはないわけです。

──そこに飛んでるのは何でしょうか?

伊東 ハチ? アブかな? 調べて、見られる生き物として記録しておきますね。あっ、この辺にはね、バッタがいっぱいいますよ。いまはチガヤがカットされてしまってますけど、もう少しするとかなりの高さまで伸びてきて、ふわふわしたネコジャラシみたいなのも出て、きれいです。

──ビオトープの維持には、これまでご苦労などもありましたか?

伊東 特に最初期、定着するまでの時期は大変でした。だんだん落ち着いて、5年以上たって今は安定期に入っているんですが。

 植物でもそう簡単ではなくて、最初の植栽配置から移動したり、姿を消したものもずいぶんあります。屋上なので土がどうしても浅く植物によっては定着しづらかったようです。逆にどんどん池を浸食して埋めていってしまうタイプの植物はカットしてもらったり、なかなか管理が難しく、村上先生からは「栄養がたりてない!」とよく言われるんですが(笑)。

──ここで見られるようになってほしい生き物はいますか?

伊東 オニヤンマは、タブレットにデータは入っているけれど、まだいない唯一の生き物です。平野部より山の方に多いので。

 ただ、オオヤマトンボというよく似たトンボは長浜城のある豊公園で孵化してるものがいて、ここまで迷って飛んでくることがあるので、オニヤンマもいつか飛んでくるんじゃないかと待っています。台風の後などに迷い込んでこないかなぁと(笑)。

リニューアル休館中の8月25日に行われた「2019夏のビオトープ観察会」のようす(ヤンマーミュージアム提供)

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