新撰 淡海木間攫

其の三十八 ツバメの不思議

ツバメ

 「ツバメ」はどこでも普通に見られる鳥ですが、実は夏の琵琶湖を代表する鳥です。3月末にオスがメスより先に来て「なわばり争い」をし、少し遅れてメスが渡ってきます。ツバメは主に人家の玄関あたりに巣を作りますが、これは人をうまく利用し、天敵から守ってもらいながら子育てをする、非常にめずらしい習性を持った鳥です。

 巣は泥と草やわらを唾液で固めて作り、卵は5個ほど産みます。約2週間後にかえったヒナは、ハエやガガンボ、トンボなどの虫をもらって育ちます。成長は非常に早く約3週間で独立します。よく子供たちに「ツバメのエサは何?」と聞くと、ほとんど「ミミズ」と答えますが、本当は飛んでいる虫たちで、水を飲むのも飛びながら飲みます。虫を取るエサ場は「田んぼ」で、稲につく害虫を駆除してくれる益鳥(有益な鳥)として、昔から人々はツバメを大事にしてきました。それで今でも人家を子育ての場所として利用していますが、最近は住宅難で非常に苦労しています。

 ところでツバメのさえずりを聞いたことありますか。巣材の土を口で運び、虫をエサとして食べていますので「土食って虫食ってシブーイ」と鳴いています。ぜひ注意して聞いてみてください。

 ツバメにはあまり知られていない習性が他にもあります。それは巣立った若いツバメや繁殖を終えた親ツバメは、琵琶湖岸の大きなヨシ原に集まって集団で寝ることです。県内には4ヶ所のネグラがあり、野鳥センター近くの湖岸にもたくさんのツバメが集まってきます。夕方薄暗くなるころ、何千、何万というツバメが飛び交い、最後はヨシ原に降るように降りて集団で寝る様子は、感動すること間違いなしです。時期は7月から9月中旬まで、皆さんもぜひ一度「ツバメの大乱舞」をご覧ください。

湖北野鳥センター 清水幸男

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