びわこ水中考古学の世界

びわこ水中考古学の世界

滋賀県文化財保護協会 編
四六判 201ページ 並製
ISBN978-4-88325-409-5 C0021
奥付の初版発行年月:2010年01月
書店発売日:2010年01月20日
在庫あり
1800円+税

担当から一言

星野之宣の伝奇マンガ『宗像教授異考録』にも取り上げられて話題となった琵琶湖の湖底遺跡。その謎を解き明かす「水中考古学」とは? 最新の調査結果などを報告し、その魅力に迫る。近刊予定の『邪馬台国近江説』とともに、2011年は滋賀発・古代ロマンに注目!

内容紹介

海外の「水中考古学」といえば、沈没船や海に沈んだ古代都市などのイメージが強いが、日本にも世界に誇ることのできる遺跡が存在する。それが琵琶湖の湖底・湖岸遺跡である。大正時代末に縄文土器が引き上げられた「葛籠尾崎湖底遺跡」、縄文時代研究に新たな視点を与えた「粟津湖底遺跡」や「赤野井湾遺跡」、水没伝承の残る「尚江千軒遺跡」など、数万年におよぶ人々の営みと活動の足跡を残す湖底・湖岸遺跡の特徴と魅力に迫り、調査方法にも焦点を当てた。巻末に、琵琶湖および内湖の湖底・湖岸遺跡一覧、主な琵琶湖湖底・湖岸遺跡の概要などを付す。

目次

第一部 シンポジウム「びわこ水中考古学の世界」
 一 琵琶湖湖底遺跡調査三〇年の成果      林 博通
 二 琵琶湖湖底遺跡から見た縄文時代      小島孝修
 三 遺構・遺物から見た琵琶湖の湖底・湖岸遺跡  小竹森直子
 四 討論 びわこ水中考古学の世界
パネラー/林博通
     小島孝修
     小竹森直子
コーディネーター/濱修
  【コラム1】潜水調査秘話 泳げないダイバー  大沼芳幸

第二部 湖底遺跡への挑戦の軌跡
 一 琵琶湖湖底遺跡調査の方法と歴史      濱 修
 二 水中カメラ・ハーマーグラブ・ジェットポンプ 大橋信弥
    ─初期の試掘調査あれこれ─
 三 「水中考古学の世界」からの贈りもの     瀬口眞司
  【コラム2】湖底出土の鉄鉱石         大道和人

資料
 琵琶湖および内湖の湖底・湖岸遺跡一覧表
 琵琶湖総合開発事業関連調査対象遺跡一覧および調査年表
 主な琵琶湖湖底・湖岸遺跡の概要
 参考文献一覧(発掘調査報告書/主な論文・その他)

前書きなど

発刊にあたって

「水中考古学」は、主として海外での沈没船や海に沈んだ古代都市の調査成果から、ロマン溢れるものとして知られています。我が国においても、水中考古学の対象である「湖底遺跡」「水底遺跡」の存在が知られ、調査研究の対象となって約一世紀がたちました。
 我が国最大の淡水湖であり、滋賀県において地理的・歴史的さらには生活・文化の中心にある琵琶湖では、大正時代末に琵琶湖北端の葛籠尾崎湖底遺跡から縄文土器が引き上げられて以来、地道な調査・研究が続けられてきました。そして、その調査・研究を大きく飛躍させる契機の一つとなったのが、昭和四八年度から平成三年度まで行われました琵琶湖総合開発事業に伴う湖底・湖岸遺跡の発掘調査です。引き続き平成四年度から二〇年計画で整理調査を行い、順次発掘調査報告書を刊行しています。さらに、琵琶湖周辺の内湖に存在する遺跡についても発掘調査を実施しています。
 そこで、これらの調査を通して確立した調査方法と、これによって得られた数多くの新発見・新知見から、旧石器時代から今に至る数万年におよぶ人々の営みと活動の足跡を残す琵琶湖の湖底遺跡の特徴と魅力に迫ってみようということで、財団法人滋賀県文化財保護協会では調査成果展として、また、滋賀県立安土城考古博物館としては第三八回企画展として「水中考古学の世界─びわこ湖底の遺跡を掘る─」を開催しました。
 これまでにも、縄文時代研究に新たな視点を与えた粟津湖底遺跡・赤野井湾遺跡、さらに、琵琶湖および内湖から出土した丸木舟を一堂に集めた展覧会を開催しました。今回はこれらの湖底・湖岸遺跡を人との関わりやその場の持つ役割といった側面から再評価し、世界に誇ることのできる琵琶湖の湖底・湖岸遺跡の特徴を浮かび上がらせることを目的に企画いたしました。また、今後の水中考古学における一助になることも願い、発掘調査・整理調査の現場での挑戦とも言える湖底・湖岸遺跡の調査方法にも焦点をあてました。
 展覧会の開催に併せて平成二一年八月一六日にはシンポジウム「びわこ水中考古学の世界」を開催しました。
 そこでは、琵琶湖総合開発事業に伴う発掘調査に開始期から携わり、今も湖底遺跡の調査に精力的に取り組んでおられる林博通氏(滋賀県立大学人間文化学部教授)に、最新の調査成果と共にこれまでの湖底遺跡の調査成果の評価と今後の調査の方向性についての基調講演をしていただきました。当協会職員からは、縄文時代研究から、あるいは遺構・遺物の在り方から琵琶湖の湖底遺跡の特質についての報告を行いました。
 七月一九日には博物館講座として琵琶湖における湖底遺跡の調査・研究の歩みを当協会職員が報告しました。さらに、会期中の土曜日には、七回にわたり当協会職員が個別のテーマを設定してギャラリー・トークを行いました。
 今回は、これらの内容を記録として残し、より多くの皆様にご活用いただけたらとの願いから、シンポジウム・講座での内容を中心とした『びわこ水中考古学の世界』を発刊することになりました。本書が、これまでも、そしてこれからも琵琶湖が私たちの生活に欠かせないものであり、次代へと受け継いでいかなければならない歴史的文化遺産であることを再認識する契機となれば幸いです。

   

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