特集 豊郷小学校改築問題

 昭和の初めに建てられた小学校校舎が解体され、新校舎に建て替えられるというニュースが大きな波紋を呼んでいる。犬上郡豊郷町の旧中山道沿いに建つ豊郷町立豊郷小学校。昭和12年(1937)地元出身の古川鉄治郎が資金を提供して建設された。
 町では図書館は保存し登録文化財への検討を進めようとしているが、卒業生をはじめとする地元住民、建築関係者などからは校舎についても保存を求める声が広がっている。


●豊郷小学校の概要●


▲講堂の入口を内側から見ると、上部に曇りガラス越しに装飾が浮かび上がる

 校地の総面積1万2000坪、本校舎(1054坪)は鉄筋コンクリート2階建て(一部3階)。

 耐震・耐火・耐風・保温・防湿・通風・採光など当時の近代建築の粋を集め、各室廊下には温水暖房設備、電気時計設備のほか職員室には、各建物に通 じる電話交換室があり、トイレも一部水洗とされた。理科、地歴室には暗幕装置、理科室にはコックス配電装置・ガス装置などが備えられた。

rouka.jpg▲窓が大きく明るい校舎の廊下

 校舎の附属施設として207坪の講堂、187坪2階建ての図書館があり、体育館、青年学校舎、飼育室、農機具舎、堆肥舎、温室、温床が設けられた。さらに、トラックは直線で100mがとれ、大雨が降ってもすぐ水がひくようにアースガラを混ぜた土を使用、長さ25mのプールも完備するなど、戦前の小学校としてはまさに最高水準の施設だった。


▲廊下と教室の間の窓。上段は廊下側へ、中段・下段は教室側へ開くようになっている

▲校舎中央


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