彦根近江タクシー株式会社取材 介護タクシー

 県内一円で営業を行う近江タクシーグループでは今年1月から「介護タクシー」業務をスタートさせた。介護タクシーにはケアドライバーと呼ばれるホームヘルパー2級の資格を持つ乗務員が乗務し、病院等への送迎をベッドからベッドまでサポートする介護付輸送サービスをはじめ、買い物同行サービス、同行介護サービスなど、利用者の希望と状況に合わせ幅広いサービスを提供する。

▼取締役総支配人 土川 勝見

▽インタビュー 編集部

▽介護タクシーをスタートされた目的は?

▼今世紀初頭にタクシーが登場し、自家用車が普及するまでの50年間、タクシーはごく限られた人々のもので、ステータスを享受できる特別なサービスだったんです。ですが、誰もが自家用車を持てる時代になったいま、タクシーは急速にその魅力を失い、人という物を運ぶだけの輸送業に転じています。

  もうタクシーの時代は終わりました。これからは物から離れ心を満たすサービスへの転換が必要と考え、特に高齢者や障害者など行動の自由を制限される方々に、介助などの手助けによって社会参加を容易にすることが、我々タクシー業の生き残れる道だと考えています。

▽介護タクシーに何らかの補助金というのは出るんですか?

▼いえ、残念ながら現状ではまったく出ませんね。ですが介護に携わることで、乗務員一人一人に変化が見られます。これまでは健常者ばかりをサービスの相手としてきたうえ、スピードと収益が比例するために安全意識が薄かったと思います。私が言うのは変ですが、スピード違反、急発進急停車など当たり前であった。ですが介護タクシーの場合、それでは車内事故につながります。骨粗鬆症の方であれば急発進急停車の揺れで骨折しますし、リューマチの方であれば、わずかな振動でも痛みます。当社のケアドライバーは常にお客様の立場にたったサービス(運転)が提供できるようになりました。それだけでも、企業にとってまんざらではなかったと思いますね。

 現状の介護輸送を見ていると、ボランティアの方等の援助輸送が多いようですが、運転技術面からも、やはり介護輸送業務についてはプロのドライバーにお任せいただきたいですし、ケアドライバーであればより一層、安心していただけるものと思います。

▽今後、需要は伸びそうですか?

▼高齢者のお客様からですが、春になったら夫婦で温泉旅行に行きたいと、他にもグループで花見に行くんだけれども、まわりの人には迷惑をかけたくないから、自分には専用の運転手さんに付き添って欲しい、そういったご相談がありますね。

 今後は足を伸ばしたまま乗っていただける、例えば前の助手席を取り払ったような車両の開発も必要ではないかと考えています。

▽ありがとうございました。

 

(2000年3月6日)




 同社のケアドライバーは県内各事業所で合計36名にのぼる。うち、取材した彦根近江タクシー株式会社には17名のケアドライバーが存在し、現在1日平均~3件の需要をこなす。料金は通常の運賃に加え介護料金が30分単位で加算される。例えば介護付輸送の場合、介護料金は30分1680円。メニューは多種あり、詳しくは下記までお問い合わせを。

彦根近江タクシー株式会社  TEL.0749-22-0106

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