招福本舗に自身の作品コーナーが設けられている松風さんは、湖東町に旦那様と共同のアトリエを構え、写真のような作品を日々、生み出している。作品のイメージどおりの人。「ぱっと見てニヤッって、口もとをゆるめてもらえるようなのがいい」そうだ。さくらちゃんという文鳥を飼っている。
プロフィール
1965 滋賀県生まれ
1990 デザイン会社勤務のち独立
kid studioとしてデザイン・
造型を行う
1992 ことうヘムスロイド村にて創作活動
1998 新アトリエに移転
個展・グループ展多数
IWハーパーデザイン展銅賞、
湯沢童画美術展作品収蔵など
▼松風直美さん ▽インタビュー・構成 編集部
▽初めになんですが、松風さんにはいつも(小社の印刷物等)お世話になってます。
▼こちらこそ。
▽松風さんはイラストだとか切り絵、立体造形、いろんな分野に自分のセンスを発揮される人で、時に印刷会社からの注文にも応じてくれる。その場合、こちら(会社)の要望をアーティスト然としてでなく察してくれて、商業芸術として作風を作品に反映させてくれる。何が言いたいのかっていうと、気難しい人じゃないんですっていう(笑)。
▼読者の人へのお断りやね(笑)。私自身、全部を楽しんでやってるから。
▽松風さんの作品には招き猫をモチーフにしたものが多いですけど、何年ぐらい前から?
▼3年ぐらいになるかなぁ。もともと動物が好きなんやね、犬とか猫とか。植物も好きなんやけど。で、猫が招き猫になったっていうのは、何か効果が期待されるモチーフの方が造る側も楽しいし、見る側も楽しいんじゃないかって。あと、招き猫を造りだしてから私自身、縁が増えたなぁっていうのもある。
▽例えばどんな縁が?
▼招き猫マニアさんとか。
▽あ、私も少しインターネットで招き猫の世界をのぞいてみたんですが凄い!「城下町と招き猫」という特集は組めても、「招き猫」という特集は組まない方が身のためだと思いました。
▼ハハハ。私は招き猫がご縁になって「日本招猫倶楽部」(7ページ参照)というのに会員ナンバー333で入会したんやね。猫好きの人たちの中で、一緒に遊んでるだけなんやけど。でも、会員の中には対象を猫から「招き猫」だけに絞り込んでる人も多いよ。
マニアの人たちには「招き猫」が猫なのよ。で、そこらへんを歩いてる猫は区別して「生ねこ」。さん付けやったな。「猫さん、生ねこさん」って。
▽話がマニアさんの方にずれましたが、松風さんの造る招き猫にはどんな効果を期待していいんでしょう。
▼えっとね、造りながらこの猫にはどんな福を呼ばそうか考えてるんやね。厄除けとか金運、そういうのは本家に任せて、私のはお遊び感覚で、やんちゃな顔のもいれば、さぼっているのもいる。それを見てこの猫、うらやましいと思わはったら、その願いを叶えてくれるんちゃうかな。逆にこんな福を招いてくれる猫を造ってください、って手紙で注文してくる人もいるよ。
▽ポーズもいろいろですが、この福にはこの格好って決めるわけですか。
▼その逆かな。造ったあとで(例えば)この猫はえらく肩肘が張ったな、そうだ気張っている招き猫にしようとか。
▽彦根の新名所「夢京橋」のシンボルキャラクターとしても松風さんの招き猫が活躍していますが。
▽で、いつのまにか松風さんの招き猫が夢京橋のシンボルに発展していったと。街灯だとかペナントにも用いられていますが、なぜ招き猫が? というのは地元の人もあまりよく知らないようですね。
▼そうやね。それは杉原さんと話したこともあるんやけど、ゆくゆくでいいと思う。逆にみんな知ってるほうが怖い(笑)。私自身は自分の作品を地元の人に見てもらいたい、知ってもらいたいと思う。やっぱり私の活動の場はここやから。
▽近々、個展を開かれるそうですね。
▼そうやねん。近江八幡の旧家を借りてやるんやけど、ほんまに普通の民家なんやね。でも普段は「近江文化財研究所」やねん。
▽なんかいいですね、秘密アジトみたいで。
▼私の作品を買ってくれた人は、普通の家の窓辺とか玄関に飾らはると思うんね。普通の家に似合うものやと思うから、個展も飾られた雰囲気が伝わるような場所でやりたかったん。
▽じゃ、ちょっとコマーシャルを。
▼はい。久しぶりの個展なんで好きなものを造ろうと思って、そしたら「ねこふくろう展」になりました。なるだけいろんな人に見てほしいと思ってます。
▽気に入った作品を買うこともできるんですよね。手放すのが惜しい、ということないですか?
▼ある。だからそれは出さへんねん(笑)。
▽今日はどうもありがとうございました。
(1999年8月26日)