昆虫の翅が出るとキラッと光って気持ちがいいですよ。

 今年も発掘地の草刈りから準備を始め、重機でガーッと掘っていただきました。例年ですと雪解け水がついて粘土が湿っていて掘りやすいのですが、今年はこの辺も雪が降らず、長く晴天が続いたので土が白くなっています。

 先ほど小早川団長が説明したように、発掘場所の隣りに見えている四手火山灰層は、発掘場所よりも下にあたる(古い)地層で、アケボノゾウの化石はこの火山灰層よりも少し上の地層で見つかりました。

 地層はたまった順番に水平に並んでいれば楽なのですが、鈴鹿山脈側に通っている断層が数千年に一度ガッと盛り上がる活動をくり返すので、水平だった地層も傾いてきます。

 そのため、同じ時代の層を順番に掘っていくと、ここのように片方が深い斜面になります。上から順にA、B、C、Dと名前をつけており、貼ってある赤いマークはE層上部の上限、白いマークはE層下部の上限、黄色いマークはF層の上限にあたります。

 化石は「どこから見つかったか」が重要なので、4mの等間隔で立っている杭は水平的な位置の基準点を示し、そこからX軸、Y軸方向に何㎝と測ります。また別の杭には掘った空間で同じ地層面を見通せるように色つきのマークがついています。基準面から下に何㎝と記録していきます。

 小さな子どもたちの中には、粘土を割るのが楽しくて、割るだけで終わってしまう子もいますが、割った面に何かないか必ず確認が必要です。今日みたいな晴天の日は、昆虫の翅が出るとキラッと光って気持ちがいいですよ。

 最近はSNSというのが発達して、スマートフォンなどをお持ちですと、その場で写真を撮って「ワニが出てきた!」とつぶやかれたりすることもできるわけですが、そうした行為はひかえてもらっています。出た化石は専門家も目を通して、ある程度まとまった段階で発表させていただく予定です。

地層写真

[左]調査地そばに露出している四手火山灰層 [右]同じ地層面であることを示す印が壁と杭に貼ってある

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