お花見や春祭りの延長で、ご来場の皆さんには楽しんでいただければと思います。 MIHO MUSEUM学芸員 桑原康郎さん

辻館長の「かざり」展への思い

──今回の展覧会が催されることになったきっかけは何だったのでしょうか。

桑原 「かざり」展※1は、当館の辻惟雄館長※2が、日本美術のひとつの流れとして過剰ともいえるほど細かな装飾品が多くみられることに着目して、「かざり」という日常の言葉をキーワードに、1988年に展覧会「日本の美─かざりの世界」を監修なさったことに始まります。東京日本橋の三越本店で開催されたものですが、なんと2週間で10万人を超える来館者がありました。会場がデパートですから、国宝や重文の指定品はなかったのにです。いまだに来館者数の記録は破られていないそうです。

──それはすごい。

桑原 その後も日本美術の特質として「かざり」の系譜が紹介されてきました。縄文土器、平安の傘風流、戦国武将の変わり兜や陣羽織、金物飾り、それから江戸時代の町人が愛用した小袖や簪などです。

──弥生式土器ではなくて縄文式土器。桂離宮ではなくて日光東照宮。能ではなくて歌舞伎。「わびさび」や禅の方向ではない、もう一方の日本文化として、「かざり」は国内外に驚きをもたらしたわけですね。

桑原 そうなんです。その辻館長が、今年3月で引退されることになり、「最後に、かざり展をやりたいな」とおっしゃったんです。宿へお送りする車の中ででした(辻館長は鎌倉市在住)。ご自分でもやり残しているのが「神仏の飾り」だと。「本来は一番最初にやらないといけなかったのに、最後になっちゃった」とおっしゃって。

 館長のお気持ちはわかるのですが、2008年のサントリー美術館や京都文化博物館での展示は国宝や重要文化財のオンパレードで、究極の「かざり」展といえるものでした。これ以上何をするんだ!(笑)

 難しい課題だと思いながら、私の頭に浮かんだのは、2010年に九州国立博物館で開催された「湖の国の名宝展」の図録だったんです※3

──滋賀県立琵琶湖文化館の所蔵品・寄託品の選りすぐりが公開されたものですね。

桑原 この図録の構成のように、滋賀の風景写真とともに仏教美術を紹介して、最後は曳山など、華やかなお祭りの装飾品を見せるという構成が頭にできあがったんです。その風景写真を担当なさった大津市在住の写真家・寿福滋さんの写真をパネルにさせていただき、壁面に展示しています。

──言われてみれば、金剛輪寺の華鬘や洞照寺の阿弥陀如来坐像など、「湖の国の名宝展」と重なっている作品も多いですね。

桑原 そこから、私と髙梨純次さん(秀明文化財団)、当館の片山寛明学芸部長の3人で、具体的に展示する品をつめていきました。髙梨さんが専門の仏教美術の名品をいろいろあげると、片山部長が「国宝の唐鞍を一度展示してみたい」とか言ったりしながら(笑)。

──展示は、10章で構成されていますが、おおむね時代順と考えてよいのですか。

桑原 大きな流れは時代に沿っています。まず、仏教伝来から始まるので、奈良の法隆寺金堂の装飾品などをお借りしました。いずれもオリエンタルな印象を受けます。東大寺の伎楽装束は、2002年に行われた大仏開眼1250年慶讃大法要のために、正倉院宝物をもとに再現されたものです。

──日本と違う、大陸的な色彩と形ですね。

桑原 つづく3章は平安仏教の阿弥陀仏や来迎図、4章は平安時代に空海や最澄が日本へもたらした密教の曼荼羅や修法に用いた法具、5章は仏教の図像の中に取り入れられた動物たち……。

──次の6章で伊藤若冲の作品が入ってきて、意表をつかれます。

桑原 辻館長が「若冲を入れよう」とおっしゃって。髙梨さんは「絶対無理」という意見で(苦笑)。そして、髙梨さんから、前ふりとして5章に、中世の日本で独自の信仰として生み出される、動物の霊性を身につけた荼吉尼天や弁才天といった神仏を入れようと提案いただいたんです。

──あれは不思議なものですね。合体ロボのように最強の仏をつくり出す。確かに、そぎ落とす方向とは反対のベクトルです。

桑原 若冲の『鳥獣花木図屛風』の中にお釈迦さまはいませんが、涅槃図の荘厳※4と似ていると考えることもできます。涅槃図は、仏教の世界で、お釈迦さまの周りを動物や植物が荘厳するものですね。若冲は、相国寺へ釈迦三尊の荘厳として、この世界を「動植綵絵」に描いて寄進したと。

──いまのお話に出てきた「荘厳」も重要なキーワードだろうと思います。

桑原 「荘厳」とは、辻館長がおっしゃるには、サンスクリット語の「飾り」を意味する言葉から来ているのだそうです。仏教的な世界を飾る、仏さまを讃えるために金銀などを材料に技術の粋を凝らした細工を施すんですね。

──その意識は仏教伝来とともに日本に入ってきたと考えていいのでしょうか。

桑原 それまでの神道はあまり飾らない、非常にシンプルな信仰だったと思います。ここから7章につづくわけですが、平安時代から室町時代に神社の社殿に納められた「古神宝」と呼ばれる宝物は豪華で、一流の技術者が作ったものが捧げられています。

 注目したいのは、これらの文様にペルシャなど西域由来のデザインが認められる点です。現在、当館所蔵となっている紫檀螺鈿宝相華鳳凰文平胡籙(重要文化財)は春日大社の古神宝に近いものですが、円形の中に向かい合った2羽の鳳凰を表すデザイン※5は、アッシリアからユーラシア大陸全土に広がった意匠に由来するものです。

 つづく8章では、神の乗り物として奉納された馬の背につける唐鞍や神輿を、華麗な「かざり」がほどこされた作品として紹介しています。

 9章では、神の渡御や天皇の行幸とそれに連なる行列、それにともなう大勢の見物人の発生こそ、きらびやかなお祭りの原点だとして、大津市坂本の日吉山王祭など、さまざまな行列の姿を描いた屛風絵を取り上げることにしました。

 そして、江戸時代の近江で町人たちの手で豪華にしつらえられていく曳山の「かざり」を最後の10章に置いて、全体の流れが決まりました。


※1 かざり展 1988年に三越百貨店(東京・名古屋・大阪)で「日本の美 かざりの世界」展、1991年にサントリー美術館(東京)で「日本をかざる」展、2002〜2003年にジャパン・ソサイエティ・ギャラリー(ニューヨーク)と大英博物館(ロンドン)で「KAZARI:Decoration and Display in Japan, 15th-19th Centuries」展、2008年にサントリー美術館・京都文化博物館・広島県立美術館で「KAZARI 日本美の情熱」展が開催された。

「湖の国の名宝展」図録※2 辻 惟雄 (1932〜)美術史学者。専門は日本美術史。東京大学名誉教授、多摩美術大学名誉教授、MIHO MUSEUM館長。『奇想の系譜』など著書多数。

※3 「湖の国の名宝展」図録 

※4 荘厳 サンスクリット語のvyūha(分配、配列)が語源とされ、「みごとに配置されていること」「美しく飾ること」の意。仏教用語で仏像や仏堂を美しくおごそかに飾ること。

※5  向かい合った2羽の鳳凰を表すデザイン(右)「紫檀螺鈿宝相華鳳凰文平胡籙」部分、(左)「双鹿連珠円文外衣」部分(中央または西アジア 8世紀)MIHO MUSEUM蔵


滋賀県から出展された作品の数々

※「KAZARI」展に滋賀県から出展されている文化財の一覧はこちらをクリック

──盛りだくさんの内容ですが、本誌で紹介するにあたっては、滋賀県にある文化財に限定させていただきたいと思います。
 まず、第1章では、穴太廃寺出土の押出仏(1)と塼仏(2)がありますね。

桑原 大津宮とも関係のあるお寺で、押出仏は薄い銀板を加工したもの、塼仏は粘土を焼いた像の表面に漆を塗って、さらに金箔を貼ったものです。飛鳥から天平の時代にだけつくられたものなので、非常に珍しく貴重なものです。

──次は、近江の主要な古代寺院の瓦です。

(3)甲賀寺跡出土瓦(甲賀市教育委員会/滋賀県埋蔵文化財センター)

(3)甲賀寺跡出土瓦(甲賀市教育委員会/滋賀県埋蔵文化財センター)

桑原 瓦当(軒丸瓦の先端の丸い部分)にはハスの花をデザイン化した蓮華文が、甲賀寺の軒平瓦(3)にはツル植物をもとにした唐草文様がほどこされています。これらは異国的な香りを残す、みずみずしい開花期の作品ですね。

 とくに珍しいのは、ハスの花を横から見た姿を文様にした方形瓦(4)で、その形から「サソリ文」とも呼ばれます。南滋賀町廃寺の瓦を焼いていた窯跡だけから出土したもので、そのルーツは不明です。

──2章には、善水寺(湖南市)の金銅誕生釈迦仏立像(5)があります。

桑原 東大寺の誕生釈迦仏立像(国宝)を継承する現存唯一の作例とされるものですので、東大寺、四天王寺、法隆寺の奈良時代の作品の中に並べさせていただきました。

(7)◎金銅唐草文両面磬(百済寺)

(7)◎金銅唐草文両面磬(百済寺)

──3章は、一般になじみがないであろう磬について説明していただけますか。

桑原 磬は、お寺で用いる「鳴り物」の一つで、総持寺や百済寺のものはずっと打ち鳴らして使われてきたので、表面が摩耗しています。総持寺のもの(6)は、中央に蓮肉と花弁、左右に草花文が、百済寺のもの(7)は左右に唐草文が施されています。

──この全体は何の形なんですか。

桑原 具体的な由来はわかりませんが、中国古代の磬は、似た形をしています。これが本来の磬の形で、ほかに雲板型や蓮華型のものも集めてみました。つづいて代表的な堂内の荘厳具である華鬘を二つお借りしています。金剛輪寺のもの(8)と京都の細見美術館のものですが、細見さんのものは、近江八幡市の浄厳院伝来とされています。

(8)◎金銅透彫蓮華文華鬘(金剛輪寺)

(8)◎金銅透彫蓮華文華鬘(金剛輪寺)

──4章は密教の曼荼羅や法具類ですが、展示では中央のケースに、多賀町敏満寺区の金銅大日如来坐像(9)が置かれていますね。

桑原 天台密教の寺として天皇や皇族からも崇敬を受けていた敏満寺は、戦国時代になると浅井長政と織田信長に相次いで攻撃され、これは数少ない遺品の一つです。鋳銅製ですが、全体が一つのかたまりではなく、台座は各部が別鋳で、組み合わせて鉄釘で固定してあります。

──それから、珍しい展示として、仏像の光背が並んでいます。

桑原 一番大きなものが、洞照寺の木造阿弥陀如来坐像光背(10)です。平安時代の造像時の光背が伝わる非常に貴重なもので、13体の飛天がみなすごくきれいなお顔をしていて、天衣の表現なんかすごく柔らかくてきれいなんです。そうした脇役に注目していただける機会かと思います。

──5章に来て、先の話にも出た動物の姿を取り込んだ神仏の最初は、滋賀県でも竹生島の女神としてなじみのある弁才天。

桑原 当館所蔵で、明治の神仏分離令以前は江の島(神奈川県)のお寺にあったと伝わる展示品は、お姿は竹生島のものとほぼ同じです。どこに動物がいるのかというと、頭上にとぐろを巻いたかっこうで、頭は老人、体はヘビの宇賀神がいます。次は白狐の背にまたがった女神、荼吉尼天の図像です。この女神の頭上にもやはりとぐろを巻いた宇賀神がのっています。

(12)「荼吉尼天曼荼羅図(市神神社)

(12)「荼吉尼天曼荼羅図(市神神社)

 荼吉尼天のまわりを眷属が囲んでいる甲良町下之郷区のもの(11)には、中央下に男と女がいるのですが、男は鳥足に魚の尾、女はキツネの足と尾をもつ異形です。他県に伝わる複数の図像にも描かれているのですが、何を意味するのでしょうか。荼吉尼天・毘沙門天・吉祥天の三尊を描いた市神神社のもの(12)の荼吉尼天の頭には、キツネとヘビがいます。

──訳のわからなさで印象に残ります。

桑原 ちょうど2015年に長野市立博物館の「狐にまつわる神々」という企画展を担当なさった竹下多美学芸員にお願いして、本展図録のコラムと作品解説を執筆していただきました。コラムで竹下さんは、インドで墓場をうろつき人肉を食べる夜叉だったダーキーニーが日本に伝来すると弁才天の変種に姿を変え、その相棒ジャッカルがキツネに変わって稲荷信仰と結びついたそうで、荼吉尼天を「最強の合体尊」と評しておられます。

(A)大涅槃図 海北友賢筆(京都・清浄華院)

(A)大涅槃図 海北友賢筆(京都・清浄華院)

──次の6章は若冲の作品がメインですが、一般的な涅槃図の例として置かれている「大涅槃図」(A)は、北近江で浅井氏家臣の子に生まれて絵師となった海北友松の子、友雪の門人・海北友賢の作ですね。

桑原 友賢の「大涅槃図」には、写実的に動植物が描かれているので、今回、滋賀県立琵琶湖博物館の有志の方々とともに、画中の動物が何かを調べてみました。右上隅に飛んでいるツバメから、左下隅の白象まで109種のうち、不明が二つありましたが、なんとか同定してみました。空想上の動物や、日本には棲息せず、剥製のみが伝来しているトラやヒョウは毛並みまで細かく描かれています。魚貝類や昆虫もけっこういます。

──7章の古神宝では、桑原さんが本誌112号の新撰淡海木間攫でご紹介なさった「雷雲蒔絵螺鈿鼓胴」が出展されていますね。

桑原 この鼓は、静御前(源義経の側室)の持ち物で、雨乞いの時に用いられたという伝承をもち、雲間に走る稲光を螺鈿で表しています。源持信が竹生島神社に奉納し、織田信長が「名物」として一時借り出したことがわかる書状もついた名器です。

──8章「神の乗物」は……。

(B)火伏神輿(神奈川・協同組合伊勢佐木町一・二丁目商和会)

(B)火伏神輿(神奈川・協同組合伊勢佐木町一・二丁目商和会)

桑原 滋賀県からの出展はないのですが、横浜の伊勢佐木町1・2丁目商和会からお借りした神輿(B)の正面と背面の扉の左右にいる獅子は、名工・高村光雲が、栗東市にある大宝神社の木造狛犬(重要文化財)をモデルに制作したものです。ちなみに、屋根の上の鳳凰は、平等院鳳凰堂の鳳凰がモデルです。この神輿は大正13年(1924)に完成した比較的新しいものですが、図案設計から塗りまで当時の名工が担当し、すみずみまで贅を尽くした名品です。

──つづく9章では、道を行く行列と見物人の姿を描いた絵巻や屛風が並びます。

桑原 京都・賀茂祭などの行列を描いた「年中行事絵巻模本」は、鳳輦(天皇の乗り物)や馬につけられた唐鞍などを注意してご覧ください。滋賀県関係では、多賀大社の「参詣曼荼羅図」(13)、東京国立博物館蔵の「竹生島祭礼図」、滋賀県立近代美術館蔵の「近江名所図屛風」(14)、「日吉山王祭礼図屛風」は祇園祭と対になったサントリー美術館蔵のものなど3作品が出展されます。

──そして、最後の10章「滋賀の曳山祭」。

桑原 今回の展示では、「懸装品」と呼ばれる曳山を飾る襖絵や見送り幕などを紹介しています。まず、長浜の鳳凰山の楽屋襖ですね。舞台の裏にあたる部分なので、普段は見られない。子ども役者が出るために襖を開けた一瞬しか見られない部分です。それが、狩野永岳筆「楽太鼓図」(15)で、雅楽で用いる太鼓と紅葉を描いています。

──極彩色ですね。

桑原 同じく長浜市では宮司町で昭和27年まで子ども歌舞伎が演じられていた宮川祭に登場していた曳山「颯々館」の楽屋襖です。「虎の岸駒」と呼ばれた岸駒による「松虎図」(16)で、岸駒の日記に、享和4年(1804)1月19日、宮川村から曳山の襖の注文があった、いついつ下塗りをしたなど、制作過程の記録が残っています。

(17)△近江八景欄間彫刻(大津市中京町自治会)

(17)△近江八景欄間彫刻(大津市中京町自治会)

 次は、大津祭の源氏山についている「近江八景欄間彫刻」(17)。源氏山はその名のとおり、紫式部のからくり人形があるのですが、紫式部が「石山の秋月」を表して、「近江八景」の残り7景が彫刻で表されてます。

──享保3年(1718)というと、かなり古いものですね。

桑原 これはまだ現役のはずです。

──これは、現実のままの立体ではないんですね。下から見上げた角度で見るときれいな立体に見えるけれど、奥行きがそれほどないから別の角度からだとひずんでいる。

桑原 そうなんです。今の展示では来館者が見下ろす形になってしまうので、正しく見えないんです。何か下に置いて角度を調整するか、しゃがんで見ていただく必要があります。

 次も大津祭で、湯立山の「神馬図 胴懸」(18)と、石橋山の「飛翔鶴図 水引幕」(19)は、日本製の刺繡です。幕はヨーロッパや中国から購入された綴織絨毯や壁掛けなどを転用したものが有名なのですが、これらの日本製のものもなかなかの名品ぞろいです。

(20)波濤に飛龍文様後幕(水口祭作坂町)

(20)波濤に飛龍文様後幕(水口祭作坂町)

 「神馬図」は下絵が円山応挙で、馬につけられた豪華な唐鞍に注目してください。「飛翔鶴図」は下絵が大津出身の中島来章で、よほどよい職人が刺繍をしているのか、羽毛の細かな再現も、全体を見た時の動きのある感じもすばらしいと思います。

──そして、最後は甲賀市の水口祭です。

桑原 水口町作坂町の「波濤に飛龍文様後幕」(20)と、天神町の「玉取獅子図内幕」(21)です。前者は明から清にかけて(17世紀)の中国宮廷で本来は官服用に織られた布だったと推測されます。後者は、朝鮮王朝時代(16世紀)に織られた朝鮮毛綴だと考えられます。

(21)△玉取獅子図内幕(水口祭天神町)

(21)△玉取獅子図内幕(水口祭天神町)

──これは対照的な2枚ですね。前者は、デザイン的に洗練された竜ですが、後者は未完成品ですし、獅子が漫画チックで……。

桑原 そうなんです。じつは天神町の町内代表、私よりちょっと若いぐらいの世代の方は、「子供の頃からこの幕を見ているけど、ずっとウナギイヌ※6みたいだと思っていた」とおっしゃっていました(笑)。

──まさに! 古さを感じさせない絵です。

桑原 この種の朝鮮毛綴は、日本の祇園の山鉾町に36枚と水口のこの1枚しか残っておらず、詳細はわかっていないようです。


※6 ウナギイヌ 赤塚不二夫の漫画『天才バカボン』に登場するキャラクターで、イヌとウナギのハーフ。


見えてくる歴史的な流れ

桑原 ざっと見ていただいた「かざり」展をおさらいしますと、初めに神仏や天皇に使われていた「かざり」が、貴族や武士に広がり、やがて、いろいろなお祭りの場などで町人が目にして取り入れる、そんな流れが歴史的にはあったといえるだろうと思います。

──経済力のあった集団がどこにいたかというのは、この変遷でわかりますね。

桑原 お祭りという視点からいえば、美しい最高水準の芸術作品が中心にあり、大勢の見物人が集まってきてお酒や食べものを楽しむ場だったとすると、今回の「かざり」展もお祭りみたいなものかもしれません。ちょうど4月から5月はお花見や春祭りのシーズンでもありますし、その延長でご来場の皆さんには楽しんでいただければと思います。 (2016.3.4)


編集後記

特集記事の補足です。会期中に陳列替えが行われるので、紹介している作品でも陳列されていない場合があります。チケット売り場やレストランがあるレセプション棟から本館へ向かう道の両側には、約80本のしだれ桜が植えられていて、例年4月中旬に満開となるそうです(その後の葉桜もきれい)。送迎の電気自動車は使わずに、歩くのもよいかもしれません。(キ)


ページ: 1 2 3

連載一覧

新撰 淡海木間攫

Duet 購読お申込み

ページの上部へ