2013年 7月 9日

琵琶湖の日に発行した新刊の話題

梅雨明けと同時に連日なんと暑い日が続くことか、先がおもいやられます。こうしたときこそ清涼剤と言える話題にお付き合いください。
 7月1日は、琵琶湖の日ということで、県内各地では企業や自治会など各団体が単位ごとに一斉清掃などを行うことが毎年取り上げられています。
 琵琶湖は世界でも有数の古い時代より存在する古代湖のひとつでもあり、滋賀の古くからの歴史はこの湖の存在に由縁することが少なくありません。サンライズ出版でも琵琶湖に関する様々な視点の書籍を発行してきましたが、このたびの新刊書は、琵琶湖の汚染が始まった頃の話題です。
 時代順にご案内すると、はじめは『湖面の光 湖水の命』高崎哲郎著です。
「世紀のプロジェクト」といわれ、総事業費1兆8635億円の巨費が投入された琵琶湖総合開発の全容をわかりやすく紹介しつつ、水質汚濁や環境破壊が進んだとはいえ、県民参加の先進的な取り組みで被害の拡大が抑えられ、日本一の湖の保全に大きな成果を上げたいきさつを、著者独自の感性で、滋賀の文化の足跡をみつめつつ紹介しています。壮大な事業の全容は長期にわたることからも、非常に分かりにくいことが多いものですが、経緯がより理解できる好書といえます。
 そして、この事業の最中、財政破綻寸前の滋賀県知事として10年余、滋賀の個性を追い続けた武村正義さんを元京都新聞社論説委員の関根英爾さんが『武村正義の知事力』として出版されました。
 「最もやりがいがあったのが知事時代」と話す武村さんが今だから話せる事をはじめ、当時の滋賀県復権にかける熱き思いを話されています。武村県政を特色づけたキーワードをひもときながら関根さんはインタビューの中から、知事とはなにか、知事の役割と責任、地方自治体の首長の存在に迫ります。まさに地方政治を舞台にした武村正義さんの人間物語が展開されています。
 国体の招致が決定した当時ちょうど仕事が面白くなってきた私にとって、当時の滋賀県の動きが良く理解できる新刊書の誕生です。両書はまさに滋賀県の現代史との言える存在となりそうです。

2013年 3月 11日

手話普及に尽力した川渕依子さん

 昨年11月に逝去された川渕依子さんを偲ぶ会が3月9日、大津市内で開催され、全国各地から200名が集まりました。依子さんの生涯は、義父高橋潔さんが、手話教育への思いをどこまでも推進した足跡を、より多くの人に知ってほしいとの一途な思いが結実したものであったと思います。
 当日は、川渕さんの指導を受けて手話通訳者と活躍する手話サークルカイツブリのみなさんの、呼びかけで実現し、川渕さんとの出会いや思い出話が行きかう合間に、手話ソングや手話ダンスが披露され、明るい雰囲気のなか4時間余という大変長い時間が流れました。
 川渕さんとのお付き合いは古く、現在も制作をご協力している「滋賀作家」の創刊間もない昭和40年ころからで、徳島に移住された3年前まで、長きにわたって、滋賀作家を始め、手話講座テキスト、御自身のエッセー集、そして残念ながら品切れとなっている手話讃美やお父様高橋潔さんを中心に手話教育を守り抜いた人々の記録高橋潔と大阪市立聾唖学校に至るまで、公私ともに大変親しくさせていただいていました。今は、どこかにぽっかり大きな穴があいたような気がします。参加者の皆さんが異口同音に、「ドアを開けて入って来られるような感じがする」と話されていましたように、未だ信じられないのが本音です。
 彼女は本格的に手話通訳の仕事を始まられたのは、昭和56年の全国身体障害者スポーツ大会が開催された頃でした。全国大会開催を契機に県内での手話サークルの活動が活発となったその背景には、川渕さんの誰にでも分け隔てなく気さくにそして慈悲深い行動が、より浸透する要因であったのでしょう。お父様の足跡については余すところなく書き続け、功績を発信続けた彼女ですが、御自身については多くを語ることがなかっただけに、その足跡の詳細は知る由もありません。突然のお別れが悲しいと同時に、献身的に手話普及に勤めた川渕依子さんの人生が何らかの形で発表されることを切に願うものです。今はお浄土でお父様から「依子よく頑張った」とほめてもらわれていることでしょう。

2013年 1月 7日

疾風に勁草を知る

長い年末年始のお休みをいただき、大変ご迷惑をおかけしました。本日より営業を開始しました。例年より寒いお正月でしたが、心配したほどの雪は少なく、全員元気に新年を迎えました。
私たちがゆっくりお休みをいただいている中、昨年に続き本年も近江のほとけ様たちは年初より各地でお出ましになっています。
控え目な県民性とどうよう、永年、ほとけ様たちもひそやかに湖国にお住まいでしたが、近年は果敢に各地にお出ましです。
弊社もほとけ様に負けないように積極的な展開を目指したいと思っております。

年初のある団体の新年会で「疾風に勁草を知る」という言葉を引用されたご挨拶を聞き、感銘を受けました。
まさしく勁草といえる弊社ですが、皆様のご支援に十分お応えできる本づくりを本年も目指していきたいと思います。相変りませずのご厚情をお願い申し上げます。

2012年 9月 6日

湖北の観音さま

この秋、長浜城歴史博物館高月観音の里歴史民俗資料館で特別展「湖北の観音」が開催されます。
井上靖や白州正子、水上勉らが絶賛した戦禍の中を村人が守り続けてきた観音さまたちの、お出ましです。かつて、フランスで展示することになった時、「お守りしている私たちも一緒に渡仏しないわけにはいかない」という話があったぐらい、自らが、在所の観音様をお守りするという意識が深いのが湖北の観音様です。
 こうした人々の暮らしの中の祈りの心を、毎日新聞滋賀面で2010年11月から本年7月まで「時を超えて 人とホトケの物語」として38回、長浜通信部の桑田潔さんが連載され、このほど連載をまとめて 『湖北のホトケたち-人々の祈りと暮らし-』として上梓されました。
 特別企画展では、桑田さんも取材を通じて感じた印象を講演されます。同時に特別企画展図録『湖北の観音-信仰文化の底流を探る-』にも寄稿。一記者の目に映るこの地域の信仰の心を伝えることに今奔走されています。
 長浜市では今年度より本格的に「観音文化信仰事業」がはじまり、全国発信事業を予定されています。今回の展示では初めてお堂をお出になる観音様が多いことも特色だという。是非両館にお運びいただきたいものです。

2012年 5月 29日

豊郷小学校の軌跡が児童書に

5月28日、豊郷町役場で、『あったかいね、永遠の学び舎―豊郷小学校物語ー』の記者発表が行われました。発行元の財団法人芙蓉会理事長の古川博康さん、著者の上坂和美さん、そして地元豊郷町長もご臨席くださいました。
古川博康さんは、豊郷小学校建設資金をお出しになった丸紅専務の古川鉄治郎さんのお孫さんで、鉄治郎を顕彰する芙蓉会の理事長です。古川さんは、豊郷小学校校舎保存活動の記録を『歴史と文化香る学び舎 豊郷小学校』を著わされ、校舎保存に尽力されてきました。
上坂先生は、事件発生直後の2003年から校舎保存活動のようすや、地元の人々に聞き取り調査を行い、鉄治郎や設計したヴォーリズの周辺事情を丹念に調査を進めてこられたのでしたが、長引いた事件扮装やその後の保存への道のりという状況の中、なかなか出版に機会を得ることができなかったのでした。ところが、今や若者から注目され、豊郷町も新しい活路を見出したという条件が整い、漸く発行となったのでした。
難産の中、世に出た本書は、複雑な社会状況をわかりやすく理解しやすい内容となりました。まちの人々の明るい表情も生き生きと描かれ、児童の未来を見つめ続けてきた近江商人「古川鉄治郎」とこよなく日本を愛したヴォーリズの心温まる交流の中から誕生した白亜の殿堂と言われた小学校校舎をめぐる物語となりました。
6月初旬より各書店に並びます。ご期待ください。

http://www.sunrise-pub.co.jp/isbn978-4-88325-475-0/

2012年 1月 31日

デジタル自費出版はいかが

昨年あれほど大騒ぎした電子書籍でしたが、最近少しなりを潜めているような気配が感じられます。もうニュース性がないからなのでしょうか、それとも、やはり紙の本が・・・ということなのでしょうか。
いづれにしろ電子書籍が凌駕するのではなく、棲み分けが始まっているのでしょう。
ところでNPO法人日本自費出版ネットワークとジャグラでは「デジタル自費出版」サイトで自費出版本を電子書籍化して掲載する事業展開を進めている。すでに160冊程度が掲載されているが、当社制作の自費出版本も今後順次掲載を予定しており、本日その第1号として、歌文集『鯛のめだま』が掲載となった。在庫切れのもの、あるいは在庫があるのでもっと販売したい、異なった人々に読んでほしいなどのご希望の方には、最適にシステムといえます。詳細については、小社までおといあわせください。

2011年 12月 28日

どうぞ良いお年をお迎えください

昨日FM滋賀でも紹介しましたが、本年、滋賀県の大きな歴史トピックとしては、やはり大河ドラマ効果が筆頭でしょう。長浜市で開催された大河ドラマ関連の博覧会への入場者も予想を大きく上回り、長浜城博物館そして彦根城への来場者も前年よりはるかに多く、関係者の御苦労の成果と嬉しく思います。
新年早々の降雪にもめげず連日テレビ出演されていたHさん御夫妻や、番組への助言や講演にご活躍の太田浩司さん、さぞお疲れであったことでしょう。視聴率も良好で成果も生まれたことは喜ばしいことでした。

そしてもうひとつ、3館連携の「神仏います近江」展の開催は素晴らしい企画でした。全国でも有数の神様、仏様を有しながら、どうにも多くを発信できていなかったのか、近年とみに再認識されていることは、嬉しいことです。企画展の開催はまさに時期をえたもので近江の歴史の奥深さをまざまざと示したものだったといえましょう。

多くのすぐれた文化資産を有しながらも、ともすれば発信力が乏しかった滋賀県ですが、これを契機に奥ゆかしさをふっ飛ばして、新しい年には果敢な挑戦を始めたいものです。滋賀の優れた自然、歴史、文化の発信により一層精進できるよう来年も邁進したいと思っております。
新年早々には、若き民俗学者橋本章さん著の『近江の年中行事と民俗』を刊行します。さらに2月には第24回大近江展の開催テーマにそって『近江のまつりを歩く』の発行を予定しています。どうぞ来年もサンライズ出版にご期待ください。本年も大変お世話になりありがとうございました。どうぞ良き年をおむかえください。

2011年 12月 14日

『滋賀の山野に咲く花』できました

長らく絶版になっていた『近江の山野草』の著者、澁田義行さんが、カメラ仲間の池本義雄さんの協力を得て、なんと700種の滋賀の山野や湖辺に咲く花々の植物ミニ図鑑『滋賀の山野に咲く花』を発行されました。スミレやランという区分わけもあり、イチヨウランという初お目見えも掲載。湖国はすでに冬、降雪も近そうなので、この時期野外に出掛ける勇気はないのではあるが、頁をめくりながら、情報を頭に入れるのもいかがでしょうか。
澁田さんは退職後、カメラ持参で滋賀県内を中心に山野を歩きまわられたその成果が2冊の出版となったのである。植物好きのあなた、山歩き、里山歩きの好きな方への最良のクリスマスプレゼントになりそうです。
http://www.sunrise-pub.co.jp/isbn978-4-88325-464-4/

2011年 10月 31日

江の父、浅井長政を活写

長浜城歴史博物館の太田浩司さん著の『浅井長政と姉川合戦―その繁栄と滅亡への軌跡』がようやく完成し発売となった。大河ドラマの方も、いよいよ終盤、どのあたりで終息するのかが楽しみであるが、このドラマの時代考証チームとして活躍した著者がテレビでは表現されなかった浅井家と長政に全容について、新事実を基に書き下ろした力作である。
戦国時代の事実の多くが、江戸時代以降に作られた創作などが真実味をもって世間に流布していることに対する挑戦状ともいえる内容に仕上がっている。「『戦国の常識』は意外と根拠がないものが多く、江戸時代に作り上げられた常識だったりする」といい、いくつかの浅井氏についての常識に疑問符をつけられた。
そのひとつが浅井軍は姉川合戦で大敗していない、というものである。
現在古戦場跡をめぐると血川、血原など合戦の凄まじさを物語る地名が残り、かなりの犠牲もあったのであろうが、則、浅井氏の大敗ではなかったらしい。従来の説には徳川時代の歴史観が多大に影響しているのだとのこと。あまり詳しくここで述べられないが、永年、北近江の地に腰を据えながらも広い見識をお持ちの著者の説をどうぞ本書でお楽しみいただきたいものである。
本来は、昨年か本年早い時期の発行を目指していたのであったが、何分、忙殺という言葉どおりの太田さんの日常生活ぶりに接しているといさかか気が引けて、やいやい言えず、ようやくの発行となった。お待たせした分、大いに満足いただけると太鼓判を押したい。

2011年 10月 24日

日本自費出版文化賞表彰式

 
10月22日、第14回日本自費出版文化賞の表彰式が、東京アルカディア市ヶ谷で開催された。
これまでは7月に表彰式を開催していたのであったが、真夏に各地からお越しいただくのも大変だということで募集時期も3月までと延期し、10月の表彰式となった。
 本年も多くの受賞者のみなさんによる、発行に至る経緯のスピーチがあったが、どの方のお話も出版された本以上に興味深いものが多い。
大笑いしながらも涙することも多々あり、また驚愕の一面を披露されることもある。そして読者拡大をもなさる。
 
 本年は、偶然にも本イベントを主管するNPO法人日本自費出版ネットワーク代表理事の中山千夏さんのお知り合いが3名も含まれていたのであった。当然ながら、決して、旧知だからといって作品が入賞したものではないが、中山さんと40年ぶりの再会というカメラマンの福島菊次郎さんは、91歳という年齢を感じさせないパワフルなおはなしが印象的であった。アマチュア時代の写真集『鶴のくる村』が特別賞を受賞されたのだ。

 会場には、研究・評論部門『琵琶湖のハスと近江妙蓮』が入賞された中川原正美さんご夫妻もお越しになっていたが、奥さまが、福島さんのお話をおききになるや「お父さん、これで最後じゃないですよ、まだまだ頑張って」と背中を押される。
 
傍で「いやいや」と中川原さんは首をふられていたが、はたしていかがであろうか。
大賞を受賞後も次々と出版されご応募される方や応募の常連の方も多い。
社会に訴えること、御自身の言葉を伝えたい、どうしても記録に残しておきたいことなどなど、人々の熱い声や思いが1冊の本に凝縮される。大変だけれど大切な仕事をしているのだと改めて感じる。
本年は『昭和17年、戦時学生の日誌』の筈見時男さんの作品も入賞されたのだが、あいにくこの日は地元での祝賀会でご参加いただけなかった。
表彰式が終わると第15回自費出版文化賞の募集が始まる。本年からは新たに『東北の記憶と記録』というテーマでの作品募集も開始される。
小さいけれど人々の足跡を残す書籍が次々誕生することを願うものである。
第14回自費出版文化賞受賞作品及び応募作品の紹介は
『自費出版年鑑2011』に掲載に掲載。発売中です
 

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