2015年 9月 5日

日本自費出版文化賞

出版不況といわれて久しい。本年は芥川賞受賞の『火花』が230万部を突破する勢いという明るい話題もあるものの、書籍の出荷高は下降線をたどり、とりわけ町の本屋さんの閉店はさびしい。情報発信の多様化の中、印刷物としての書籍の需要が減少するのは時代の趨勢で仕方ないとは思うが、紙媒体の資料保存が減少することは、将来的には大きな禍根を残すのでのではないかと危惧する。
書籍は発行点数では増加しているが、雑誌の廃刊は歯止めがかからない。一方、自身の創作や研究成果をまとめて書籍として出版することを願う人は少なくはない。同人誌は往年の勢いは減少したものの、文学学校や文章づくり講座はにぎわっているという。
サンライズ出版は、謄写印刷業として創業後、官公庁や学校の資料印刷を主として歩んできたが、1976年ごろから自費出版の仕事を行ってきた。当初は著者や発行主体が必要費用を準備して書籍を作成し、関係者に配布する形態で進めていたのであるが、中には、市販したほうがより多くの反響があるのではないかと思われる著作があり、1993年には図書コードを取得し、市販できる書籍作りを進め、その後出版が本業になった。
わが社と同様に印刷会社が自費出版を請け負うことは少なくなく、1997年には(一社)日本グラフィックサービス工業会加盟社の有志で日本自費出版ネットワークを結成し、翌年には自費出版物に光をあてようと「日本自費出版文化賞」が創設された。この文化賞は、「自分史」命名者の色川大吉氏を委員長に、中山千夏、鎌田慧らが審査員として協力いただいており、中山さんには2004年にNPO法人化した日本自費出版ネットワークの代表理事をお願いしている。彼女は『自費出版年鑑2014』で「商業主義、マスコミでの表現の自由の先行きが危ぶまれる。そんな時代にあって、自費出版文化に期待を持っている」と記される。それは「個々人の発意による自費出版をサポートし、もりあげることによって、個々人の表現の自由を守り、ひいては個々人の幸せを守るのではないか」と刊行の言葉をよせている。まさしく、自費出版の本領を言いえた発言である。
文化賞への応募数は1000点を越えたこともあるが、概ね700点の作品が集まる。年間7万から8万点の書籍が発行されている中で、わずかではあるが、決して営利を目的としたものではなく、人々の思いや情熱が満載され、世に訴えたいこと、残しておかねばならないという崇高な意識が詰まった書籍となっている。残念ながら、独りよがりの内容や製作者の力量不足などで、十分その効果が現れていないものも少なくはないが、目を見張る成果や、社会的に大きな反響を及ぼすこともある。
記憶に残る大賞受賞作としては、視力障害者の歴史と伝承をまとめた『日本盲人史考』大部な『対馬国史』、4万6300人のシベリア抑留死亡者名簿『シベリアに逝きし人々を刻す』、日本の手品350種を絵入りにした『日本奇術演目事典』があり、京滋からも『北近江 農の歳時記』や『城州古札見聞録』が大賞を受けている。第18回日本自費出版文化賞の最終選考会は、9月2日に行われる。応募総数680点の中からどんな作品が選ばれるのか楽しみである。(2015年9月2日京都新聞夕刊「現代のことば」より

2005年 6月 25日

自費出版フェスティバル

流通することはないが、貴重な庶民の生活の歴史ともいえる自費出版。

従来は、特別な人の特権とも言えた自費出版が、今ではかなり手軽にできるようになり、若い人の出版も増えてきた。そしてブログ作家の東條するという状況だ。

社団法人日本グラフィック工業会は、こうした社会的に隠れた存在の自費出版作品に光を当て、文化的な支援を行うことを目的に、1998年に日本自費出版文化賞が始まった。

そして6月1日には、第7回受賞作品が決定し、7月16日には、授賞式が大阪千里ライフサイエンスセンターで開催される。

受賞式当日は、自費出版フェスティバルが同会場の開催される。
自分の作品紹介や、自費出版本のフリーマーケットなど新しい試みも登場。

「私の本を見てください。」
「こんな本知っていますか」
「私はこうして本を作りました」  などなど。

著者たちの交流の場である。

さらにこれから「本を作りたい」という人へのアドバイスも行う。

今年で4回を迎えるが、今年は初めて関西で開催することになった。
例年、京都の丸善や、大阪ジュンク堂などで自費出版を紹介するイベントが開催されているが、一味ちがう、フェスティバルに乞うご期待。

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