2010年 10月 14日

正明寺は観音正寺・梵釈寺とつながるのかどうか?

『近江の祈りと美』の仕事をしているとき、写真家の寿福さんが「正明寺の千手観音さんは観音正寺の焼けた観音さんによく似ている」と言われた。なるほど写真で見ると本当に似ておられる。時代も同じく室町時代で共に天台宗寺院だったときの作である。観音正寺の観音さんは胎内に作者が書かれていたのだが、正明寺の観音さんは果たしてどうなのか?

先日、大石真人著『近江路の古寺を歩く』(山と渓谷社)を読んでいたら、蒲生町の梵釈寺は正明寺の晦翁禅師が天和年間に開創したお寺だと書かれていた。梵釈寺の御本尊・伝観音像は実は宝冠阿弥陀像であるということは『近江の祈りと美』で高梨さんも解説されており、「ここは重文の正式名称ではなく宝冠阿弥陀像と書いておこう」といわれた、謎めいた仏さまである。もしかしたら正明寺さんにおられた宝冠阿弥陀像が梵釈寺に来られたのでは……などと、勝手な想像をしてしまう。 

とりあえずは、17日からご開帳になる正明寺の観音さんを拝観に行くべし。

 

2010年 10月 13日

仏像ってむずかしい4

今回は仏像というよりも、お寺や神社の名前について、むずかしいことのお話です。
まず大津の園城寺(おんじょうじ)さんは通称は三井寺さんと言われています。三井寺の由来はといえば、天智、天武、持統の三天皇が御産湯をつかったという「閼伽井屋」という井戸があり、これが「御井」(みい)と言われ、それが三井寺になったのです。今回は図版に表記する所有者名として正式名称をいれたのですが、もしかするとわからない人もおられるかもしれませんね。
国宝十一面観音さんのおられる高月の向源寺さんについては、このお寺の住所が「渡岸寺」なので、ついつい渡岸寺の観音さんという人が多いのですが、これはまちがいです。
その他、高月の充満寺(じゅうまんじ)は西野薬師堂、日吉神社は赤後寺(しゃくごじ)、鶏足寺(けいそくじ)は己高閣(ここうかく)というように本当にややこしいですね。

2010年 10月 12日

京極氏のお干菓子

10月9日(土)に開催された上平寺戦国浪漫の夕べは、あいにくの雨で、
会場が伊吹薬草の里に変更され、ろうそくの灯りに包まれた上平寺庭園の
幽玄の世界には浸れませんでした。
でも、午後の講演会には多くの方が来場され、
熱心に講演会を聞いておられました。
 
で、私は…というと、毎年お茶席がかけられるので、そちらで一服。
 
 

なんとまあ、今回は京極氏の家紋のお干菓子が登場しました。
作られたのは京極氏の菩提寺・徳源院の奥様。
左の大徳寺納豆入りのお干菓子は和三盆の甘さと大徳寺納豆の塩味が
うまく融合していて、もうひとつ欲しかったくらいでした。
来年は晴れますように!! 

2010年 10月 11日

滋賀県は地味で良い?

ようやく『近江の祈りと美』の印刷も終わり、あとは製本を待つばかりになり、本日は久々に近くの山を散策し、自生の紫蘇の実を採ってきた。 
ところで滋賀県は国宝・重要文化財の仏像が全国で3番目に多いというのにもかかわらず、どうもそのことが全国に浸透していないのではないだろうか?
2007年に講談社が『週刊 日本の仏像』全50巻を出したが、奈良、京都、奈良、京都の繰り返しで、滋賀県と言えば、15号「湖北、湖東の観音めぐり」と27号「延暦寺千手観音と比叡山」の2巻のみ。あまりにも露出度が少ないというか、知られていない。 
まあ、観光寺院が多いわけではなく、拝観のときは、地元の寺世話さんに電話をして、お堂を開けてもらうというところも多いから週刊○○で派手にできないという理由はわからなくもない。 
ということは同じ講談社が発刊している『原寸大 日本の仏像』も奈良編と京都編の次は、たぶん出ないであろう。 
そんなわけもあり、このままだと滋賀県の仏像の本は絶対できないままになってしまうーっ!! といういわば危機的意識もあり、今回滋賀県の仏像をまとめた本を作ることになったのだ。 
ずっと作りたいという思いはあったが、著者の寿福さんと高梨さんにお願いしたのは昨年12月、なんとか来週出来上がる。 
タイトルにはあえて仏像とか彫刻という名前を入れず、装丁もきわめてシンプル。制作途中で、ケースはカラーにしようと変更したものの、表紙は文字のみというあえて「地味」にした。
派手でなくても良い。でも多くの人に近江のほとけさまを知ってほしい。

2010年 10月 6日

連日のイベント終了

10月2日岡崎市で開催したシンポジウム、200名以上のご来場をいただきありがとうございました。
県外からのご参加も多く、盛会でした。愛知城郭研究会、岡崎市教育委員会の皆さまに御礼申し上げます。
翌3日は「鳥居本宿場まつり」。お天気が危ぶまれたものの、4時頃までなんとか持ちこたえました。喫茶、食事処に加え、一般公開の民家も増えました。我が家の前のヴォーリズさんのお家の前は、ひっきりなしに、イベントが行われていました。
普段は静かな中山道ですが、各地から多くの方にお越しいただき、江戸時代の面影のこる町歩きを楽しんでいただきました。 

 

 
さて、次の土曜日は伊吹山の麓、上平寺「戦国のゆうべ」で本の販売をします。

2010年 10月 1日

仏像ってむずかしい3

今回『近江の祈りと美』を作るにあたり、とても悩ましかったのは、仏像の背丈です。
像高=頭から足先
総高=全体の高さ
座高=半跏像のときの頭からお尻
 
確かこういう区分だったんですね。
でも、像高が本によってマチマチなのです。誤植ということもあるけど、調べていくうちにどうやらそうでないような……。で、聞いてみると、まず、重要文化財として登録した時点での身長(像高)と、後で測ったときの身長が違うのです。
私たちが身長を測るときは、身長計に乗って測るけど、仏像の場合は身長計を持ってきて、それに乗っていただくわけではなく、たぶん金属製のメジャーかなんかで測るんでしょうね(実はどうやって測るかを高梨先生に聞きそびれてたわ)。だから、測る度にちょっとした誤差が、生じるらしいです。
それとともに、昔に文化財指定だった仏像は尺貫法だったので、それをセンチに換算すると誤差が出てきているということもあるようです。

2010年 9月 29日

仏像ってむずかしい2

以前、写真を裏焼きして印刷したことがあり、今回もそれだけはとても注意していたのですが、校正のときに発見し、ヒヤッとしました。
そこで、裏焼き防止策について、まず、ポジフィルムの左にギサギザがあるから、それと確認すること。
でも、たまにデュープしたものがさかさまになっていたということてもあったので、オリジナルでない場合は要注意です。
次に、仏像が薄い衣をまとっていて、これを天衣というのですが、天衣は左肩にかけておられるので、それに注目します。後は、既刊図録を見ながらチェックしました。
 
三尊像などでは、右左が決まっているかと思いきや、逆の場合もありました。たとえば不動明王さんの右にはセイタカ童子君で左はコンガラ童子ちゃんが一般的みたいなのですが、逆の場合もあります。一番悩ましかったのは、三尊集合写真がなくて、一枚撮りのときです。このときは、直接お寺に電話をして確認しました。

2010年 9月 28日

仏像ってむずかしい1

ようやく、校正が終了しました。来月19日に発売の『近江の祈りと美』。 
内容はというと、近江の仏像、神像を収録した本で、図録風に280頁がカラーで、後半は「近江の彫像」という本論、そして滋賀県におられる国宝・重要文化財・県指定文化財の彫刻一覧を掲載します。
 
さて、仏像の本を作りたいと常々思っていたものの、結構難しいことがいっぱいでした。
まずはその1。
仏像のお名前、実は同名がいっぱいおられるということです。
一般には「素材」「種別」「立っているか、座っているか」というのでお名前が決まります。
たとえば「木造十一面観音立像」「銅造如意輪半跏思惟像」「木造大日如来坐像」というふうに
だいたい三つのパターンの組み合わせなのですね。
 
そこに、その仏像の所属するお寺の名前をつければ、どこの家の花子さんとか太郎君ということでわかるかといえば、おっとどっこい、同じお寺に十一面さんや阿弥陀さんがいっぱいおられるわけでして、つまり同姓同名のお方が同居しておられます。
そこで、次に年上か年下か、つまり製作された時代で区別することになり、お名前の後ろに○○時代とつけます。でももっと大変なのは、大きなお寺だと、同時代に造られた同姓同名さんがおられて、時代別では足りず、今度は昔はお寺のどこに住んでおられたか(○○寺旧蔵)とか、像の底をひっくり返して身体検査をすると、お腹あたりに何年に像を造ったとか、願い主は誰々とか、製作者の名前が書かれていたりするので、それを頼りに(○○年銘)とか(○○作)というふうに見分けをつけるのです。

10年ほど前にあるお寺のリーフレットを作成したとき、重要文化財の十一面さんが2人一度に登録されておられていました。2人と書きましたけど、仏像は人間ではないので2人というのは間違いで、躯(く)と言います。だからこの場合も2躯おられました。ご住職も「さてどちらだったやろう」と写真を取り出して本人と見比べておられました。この十一面さんは背丈も同じくらいで平安時代の作。最後は顔で判断しました。あとでわかったのですが、平安時代の作でも、少しお歳を召した風の方が早い年代に造られたものだったようです。
今回の本で、とても似ておられたのは、延暦寺の慈恵大師さん2躯と金剛輪寺と常照寺の阿弥陀如来さんです。
不思議なもので、仕事をしているうちに少しずつ判別できるようになりましたが、できれば「十一面1号、十一面2号」というように名前をつけてほしかったと思ったものでした。

2010年 9月 23日

仏像の本がもうすぐできます。

読者からよく「仏像の本」はありますか?とお問い合わせをいただいていました。既刊本では『近江観音の道』や『近江湖北の山岳信仰』などがあるものの、滋賀県の仏像を集大成した本はちょっとやそっとで作れるはずがない。でも、いつか作りたいと思っていました。 
1930年に創業したサンライズは今年80年を迎え、昨年秋頃から何か記念になるような本を作ろうと考えていたこともあり、作るのなら今かも…ということで、清水の舞台を飛び降りる気持ちで取り組んだのが今回の『近江の祈りと美』です。
遅ればせながら、ようやく予約申し込みのリーフレットができました。リーフレットには掲載尊像一覧も入れておりますので、最寄りの書店でご覧ください。

 

2010年 9月 12日

9月15日『愛知の山城ベスト50を歩く』が発売です

ずっと前々から夢だったこと。それは直接トーハンや日販に新刊がドーンと発送できることでした。
一般読者にはわからないことでしょうが、実はこれまでは、地方小出版流通センターさんに送った本が、書店の注文に応じてトーハンや日販に送られ、それから書店に回るため、県外書店さんへ届くのはおそらく最短で1週間かかっていたと思います。
今回はデータ登録を先にしてもらうため、地方小さんに見本出しをお願いしました。明日、本は取次さんに届き、自動仕分機で注文データに沿って書店へ送られるとか……。
ちなみに愛知県の人口は700万人だから、実に滋賀県の5倍なんですね。
いつも、いつも発売日がどんどん遅れていたけど、今回は編者のTさんの熱意で順調に仕事が進みました。本当にありがとうございます。

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