2006年 6月 22日

18禁の人形劇

 今年も、日本自費出版文化賞の選考が終わり、大賞受賞者にインタビューしに行って来た。
 6月12日(月)、米原駅から特急しらさぎで高岡駅(新潟県高岡市)、特急北越に乗り継いで新潟駅に午後5時19分着。新潟港に一番近いビジネスホテルという基準でスターホテル新潟に泊まる。新潟駅から徒歩10分なのだが、旅行バッグに入れてきた受賞作『人形のかしら集』が重い。何kgあるんだ、これ。A4判で360ページ。使用してる紙が厚すぎ。 
 13日(火)、午前8時、曇り空。ジェットフォイル(新潟港―両津港間1時間の高速船)で佐渡島へ出発。入れ違いにイカ釣り船が次々帰港してくる。
 両津港から路線バスで反対側(H形をした佐渡島の上の凹みのところが両津だとすると、下の凹みの側)の旧佐和町(現在は全島が佐渡市)へ。Hの横棒の部分は平野部になっていて、そこを縦断する(という説明でイメージできない方は地図を見てください)。佐渡島中央のメインストリートなのだろう、「ファッションセンターしまむら」「洋服の青山」「ブックオフ」といった店舗が並ぶ、地方の国道沿いならどこでも同じの光景を車窓から眺める。
 午前10時、受賞者の名畑さんのお宅に到着。インタビュー開始(7月中旬発行の『自費出版年鑑2006』に掲載予定)。
 『人形のかしら集』は、佐渡島に伝わる人形芝居に用いる人形の頭(かしら)を撮影した写真を収めた写真集。
 人形芝居は、説教人形、のろま人形、文弥人形の3種類があって、国の重要無形民俗文化財に指定されているとのこと。
 この中ののろま人形というのは、シリアスな説教人形の芝居の合間に演じられるコメディという位置づけ。下ネタも辞さない(むしろ歓迎)。例えば、最も有名な演目である「生き地蔵」でのセリフを昭和10年に口述筆記した中の一節は、次のようなもの(台本にあたるものはなく口承によってのみ伝えられてきた)。「下ン長」は主人公の男で、大坂まで出向いて仏師に生き地蔵を彫ってもらうが、仏師はこれが生き地蔵だと称して人間の男(木之助。のろま人形芝居での道化役)を渡して金をせしめる。木之助を下ン長が背負っての帰路での会話。
  下ン長 お地蔵さん お地蔵さん 何がまた大好きだア。
  木之助 牡丹餅(ぼたんもち)なんぞが 大好きだ。
  下ン長 お地蔵さん お地蔵さん 何がまた大好きだア。
  木之助 十七八の女の子と 抱かれて寝るのが大好きだア。
 生き地蔵などではないことがばれ、裸にひんむかれた木之助が笛太鼓のはやしにのせて舞台上を飛び回って幕。
 のろま人形芝居に用いられる人形の中には、それぞれ男性器、女性器がついた男女の人形もあってもっと直接的なシーンも演じられたらしいとのこと(地域が異なるので、名畑さん自身は見たことはない。)
 帰りの新幹線(行きの日本海側ルートと違って、上越新幹線で東京へ、東京から東海道新幹線にした)の喫煙車両でタバコをふかしながら頭に浮かんだのは、昨年日本公開された映画『チーム★アメリカ/ワールドポリス』。「サンダーバード」のパロディ、というかハリウッド超大作映画のパロディとして製作された操り人形映画である。定番のベッドシーンをちゃかす意味合いで、男女の人形が体位をあれこれ変えながら延々セックスするシーンがあって、日本公開時は18禁指定となった(戦闘シーンが残虐であるためと書いてるサイトもあり)。DVDレンタル中。まったくちゃちではない。セットやライティングは無駄なぐらいこっていて、人形の顔がセリフに見合った表情に見えることにまず驚かされるし、いかにもハリウッド映画的な伏線を見事に成功させたクライマックス(あくまで下ネタ)など、映画としてよくできている。
 時代や国に関わりなく、人間は人形を作ったら×××と×××をつけて××××させてみたくなるものらしい。そして、それを見せられると笑ってしまう。

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