2011年 6月 07日

北の大地での生活を活写した回想記が完成

 アニメ「ケイオン」の聖地で有名となった豊郷小学校のある豊郷町からは伊藤忠を創業した伊藤忠兵衛を始め多くの近江商人が出ている。麻布を扱っていた青山仙右衛門さんも東京などで活躍した近江商人であった。
 昨日、この青山家の御子孫の信義さんが編集されたご母堂の著作『つづら折り回想記』をお届けにあがった。信義さんの母上の青山江美さんは、京都に生まれ、早くにお父さんと死別、その後、母娘が北海道に渡った。豪快かつ積極的に呉服店を切り盛りしてきた江美さんの母上の生涯とともに、明治から平成まで5人の子供を抱えながら、たくましくも明るく生きてこられた江美さんの回想記である。ともすれば、湿っぽくなりがちな内容なのに、この母娘は、めそめそすることなく、困難を困難と思わず、逆にバネとして突き進んでこられた様子は、清涼感を覚えてしまう。カラッと生きてこられた足跡は、まさしく北の大地のようにおおらかだ。
江美さん曰く「私は一大事の時は却って頭がスカッとする方で、うろたえず万事指図役になり、まごまごする人がおかしいほどになる」と自宅が火災に見舞われたときにでもこのような塩梅。
 主人を立て、子供を愛し、信心深い御性格が、随所に感じられる。北海道で活躍した近江商人は多く、様々な伝承も見聞するが、北海道といわず近江においても女性が商いに精出す様子や生活の記録を残すことは、ほとんどないに等しい。こうした意味では大変貴重な記録といえよう。
 筆をとられたのが、晩年、69歳の頃からというので、すでに遠い記憶をたどりながらの作業と思うが、詳細な記述に驚かされた。江美さんは平成18年、89歳で逝去されたが、生涯を書きとめられた10冊の回想記が残されており、回想記を見つけた四男の信義さんが中心となって、当時の記録や足跡を訪ねながら手記を編集、10冊の中の一部が『つづれ折り回想記』として出版されたのである。
 ご自宅には、文中にも登場する江美さん愛用のミシンを始め、多くの手芸作品や青山家の歴史を伝える「引き札」などが整然と飾れ、信義さんの母上へのこの上ない深い思いを痛感したのであった。ありがとうございました。
 

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