2010年 9月 28日

仏像ってむずかしい1

ようやく、校正が終了しました。来月19日に発売の『近江の祈りと美』。 
内容はというと、近江の仏像、神像を収録した本で、図録風に280頁がカラーで、後半は「近江の彫像」という本論、そして滋賀県におられる国宝・重要文化財・県指定文化財の彫刻一覧を掲載します。
 
さて、仏像の本を作りたいと常々思っていたものの、結構難しいことがいっぱいでした。
まずはその1。
仏像のお名前、実は同名がいっぱいおられるということです。
一般には「素材」「種別」「立っているか、座っているか」というのでお名前が決まります。
たとえば「木造十一面観音立像」「銅造如意輪半跏思惟像」「木造大日如来坐像」というふうに
だいたい三つのパターンの組み合わせなのですね。
 
そこに、その仏像の所属するお寺の名前をつければ、どこの家の花子さんとか太郎君ということでわかるかといえば、おっとどっこい、同じお寺に十一面さんや阿弥陀さんがいっぱいおられるわけでして、つまり同姓同名のお方が同居しておられます。
そこで、次に年上か年下か、つまり製作された時代で区別することになり、お名前の後ろに○○時代とつけます。でももっと大変なのは、大きなお寺だと、同時代に造られた同姓同名さんがおられて、時代別では足りず、今度は昔はお寺のどこに住んでおられたか(○○寺旧蔵)とか、像の底をひっくり返して身体検査をすると、お腹あたりに何年に像を造ったとか、願い主は誰々とか、製作者の名前が書かれていたりするので、それを頼りに(○○年銘)とか(○○作)というふうに見分けをつけるのです。

10年ほど前にあるお寺のリーフレットを作成したとき、重要文化財の十一面さんが2人一度に登録されておられていました。2人と書きましたけど、仏像は人間ではないので2人というのは間違いで、躯(く)と言います。だからこの場合も2躯おられました。ご住職も「さてどちらだったやろう」と写真を取り出して本人と見比べておられました。この十一面さんは背丈も同じくらいで平安時代の作。最後は顔で判断しました。あとでわかったのですが、平安時代の作でも、少しお歳を召した風の方が早い年代に造られたものだったようです。
今回の本で、とても似ておられたのは、延暦寺の慈恵大師さん2躯と金剛輪寺と常照寺の阿弥陀如来さんです。
不思議なもので、仕事をしているうちに少しずつ判別できるようになりましたが、できれば「十一面1号、十一面2号」というように名前をつけてほしかったと思ったものでした。

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