2011年 11月 03日

ギリギリセーフの長浜東映

 まずは前回に続いて、近く上映される映画の案内。
 東京の東劇で11月19日~27日、「相米慎二のすべて」と題して、全作品13本が上映される。。私はわざわざ見に行きはしないのだが、関東在住あるいは東京出張のある方はどうぞ。没後10年ということで、2冊の関連書籍『甦る相米慎二』『シネアスト相米慎二』も出たばかりだ。
 11月22日に上映される6作目の監督作品(1985年)を、高校生の頃、長浜市にあった映画館で観た。タイミングとして今しかないと思うので、落としどころも思いつかないまま書いておく。
 これを映画館で観ることができた、私はギリギリセーフの世代(1968年生まれ)だ。
 なぜかといえば、成人映画(今回の東京上映の場合も、R18指定)だからで、厳密にいえばアウトだが、映画館は入れてくれた。長浜駅から東へ200mほど、駅前通りと北国街道が交差する角にあった長浜東映という映画館。当時、長浜に2つあった映画館の片方で、私の記憶にある期間(小・中・高)はずっと、にっかつロマンポルノの上映館だった。
 その建物は、『長浜市史』や『画文集 わたしの長浜』(郷土出版社)によると、長浜の実業家、下郷伝平父子の寄付をもとに運営されていた慈善団体・下郷共済会が、大正天皇の即位を記念して大正4年(1915)に建てた図書館だったもので、モルタル壁の洋風建築。戦後は映画館として利用され、写真集『湖北の今昔』(郷土出版社)には、一般映画を上映していた時代(昭和38年)の写真が掲載されている。
 にっかつは昭和63年(1988)にロマンポルノの製作をやめているので、平成になったかならないかぐらいに取り壊されて、跡地に滋賀銀行の支店が開業したようだ(私は大学進学で県外に出ていたし、『長浜市史』などにもこの辺りの記述が見当たらない)。当時は、排気ガスで汚れた時代遅れの建物という印象だったが、もうしばらく、長浜が観光地として知られる時代まで持ちこたえていたら、改修され保存対象になったかもしれない。黒壁ガラス館のオープンは平成元年(1989)である。
 もう一つの映画館は、長浜協映といって、浜京極という名のアーケードの中ほどにあった(取り壊されて、現在は駐車場)。長浜東映より広く、2階席もあった。地方の映画館では新作の封切でも2本立てだったから、『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』と『戦場のメリークリスマス』(ともに1983年)という何の関連もない組み合わせを観たことがある。
 さかのぼって中学の頃、機動戦士ガンダムの映画(いわゆるファースト・ガンダムの世代でもあるわけで)を同級生2人と観にいく約束をしたところ、一人が親に校則を理由に反対された。親同伴でないと映画館に入ってはいけないことになっていたのである。「わしが連れてったことにしたらええがな」と私の父。友人の家に電話をし、礼を言う向こうの親に適当に応答している父に感謝した。
 相米監督の映画は、1作目『翔んだカップル』をテレビ放映で観たのが最初。RCサクセションの「ブン・ブン・ブン」が主人公のつけてるヘッドホンの音として流れるシーンに、隣で観ていた姉といっしょに驚いた。
 作品データによると、ここで話題にしている6作目『ラブホテル』(1985年)が8月3日封切、次の7作目『台風クラブ』(1985年)が8月31日封切なのだが、地方だから遅れて上映されたのか、6作目の『ラブホテル』を後で観たように思う。都市圏でしか上映されなかった『台風クラブ』は、名古屋の映画館へ観に行った。
 さて、長浜東映で観た『ラブホテル』についてだが、残っている記憶はわずか。テスト期間で午後から休みの平日(映画館周辺の人通りは少なかった)だったように思うが、服は学生服から着替えたんだっけ? 長浜東映へはそれ以前に、別の監督の成人映画を観に行ったことがあるが、そっちの記憶とごっちゃになっているせいでもある。そちらはワンシーンも覚えていないので割愛。2回とも場内がガラガラだったのは確か。
 『ラブホテル』の覚えているシーンは、夜の埠頭に立つ名美(速水典子)、挿入歌がもんた&ブラザーズの「赤いアンブレラ」。電話で村木(寺田農)と話す名美、挿入歌が山口百恵の「夜へ…」(作詞:阿木耀子、作曲:宇崎竜堂)。相米慎二の映画は、歌ばかり印象に残っている。これは、ありきたりな感想だ。本人が「俺は全部ミュージカルだと思って撮ってる」と発言しているし。
 山口百恵には興味がなく(『台風クラブ』で中学教師を演じた夫・三浦友和の方は、その後も気になる俳優になった)、曲名もわからないままだったが、『甦る相米慎二』で「夜へ…」だとわかり、四半世紀ぶりにYouTubeで聴いた。
[追記]
『甦る相米慎二』によると、相米慎二は最も好きな映画として成瀬巳喜男(前回ブログ参照)の作品をあげていたそう。作った作品と作り方は正反対。驚く。

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