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2012年 5月 17日

満喜子とメレル、共に闘う愛の物語『負けんとき』

 
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玉岡かおるさんの最新小説『負けんとき ヴォーリズ満喜子の種まく日々』
上下巻(新潮社、2011)を連休中に読み終えました。
 
ヴォーリズといえば、いまやアニメ「けいおん!」で有名になった
旧豊郷小学校を設計したキリスト教伝道師。主人公はその妻・満喜子さんです。
 
内容をひとことで紹介すると(すごく乱暴に)、
満喜子とメレルが数々の逆境に共に立ち向かって闘う愛の物語。
津田塾創始者で日本初の女子留学生である津田梅子など著名人も絡んできて、
骨太ながらも繊細な大河小説に仕上がっていると感じました。
 
満喜子は播磨(兵庫県南西部)小野藩元藩主・一柳家の娘として東京で生まれます。
世が世ならお殿さんちのお姫様ですが、明治生まれなので華族令嬢。

近江八幡で近江兄弟社を興したウィリアム・メレル・ヴォーリズと結婚したため、
書名にもヴォーリズ満喜子とありますが、本名は「一柳満喜子」のはずです。
のちにヴォーリズは日本人となり、「一柳米来留(めれる)」と改名するのですから。
 
なぜこんなことを書くのかというと、私はこの小説を、女と男、東洋と西洋、
陰と陽、静と動、隷属と自由、前近代と近代、士と商、多神教と一神教、
田舎と都会、賤と聖……といった対立概念がキーワードとして埋め込まれた、
少し大げさにいうと「思想」を読み解く本としても読み進めてしまったからです。
 
著者の玉岡かおるさんはこの作品を書き終えたとき、達成感というよりも
大きな虚脱感におそわれたのではないでしょうか。かなりしんどかったと拝察します。
 
書名の「負けんとき」、そしてあとがきにある「よう負けんかったな」は、
著者の偽らざる心境であるとともに、勝つか負けるかという二項対立ではなく
「勝たんでもええけど負けたらあかん」という考え方も、
生きていくためには必要というメッセージなのだなととらえました。
 
そういう意味では、さまざまな対立概念のどちらかを100%是としたり非としたりすることは、
この本の中では、あえて避けられているといってもいいかもしれません。
 
まあ、そんな難しいこと考えずに楽しめる小説です。映像化されてもおかしくないでしょう。
来年のNHK大河ドラマは新島八重子と襄の「八重の桜」ですから、
朝の連続ドラマ小説はぜひこれで。一柳満喜子とメレルが共に闘う愛の物語「負けんとき」。
 
正直いうと、近江八幡がどのように描かれているのかというスケベ心(?)もあって
読み始めたんですけど、それは読んでからのお楽しみ。
まあ、メレルが没後、近江八幡の名誉市民第1号になったという言及はあってもよかったかな。
 
とにかく「その妻」として夫の旧姓のほうが有名な女性が
数々の「種」をまいてきた生涯を広く知っていただきたいと思います。
 
 
最後に近刊の宣伝。
上坂和美著『あったかいね永遠の学び舎 豊郷小学校物語』
http://www.sunrise-pub.co.jp/isbn978-4-88325-475-0/ 
 
                                   (編集部Y)

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