2014年 3月 30日

眠りこんだ冬

 しばらく月一更新が続けられたなと思ったら、5ヶ月も間があいてしまった。
 前回ネタにしたテレビドラマ「ゴーイング マイ ホーム」をなぞるように、父が救急車で搬送され、そのまま40日間ほど入院したまま他界、四十九日が明けるまで休日に書いている時間がとれなかった。こういうのをなんと言うのか。
  物言えば唇寒し 秋の風
というのとは明らかに違うな。批判したわけでなく、ほめていたし。
  物言わぬ唇見つめ 冬の夜
というのは写生。病室で、このヒト、あたしのことわかってるのかといぶかしがる娘(私からすると姉)の姿を改めて見ることになるとは。
  ゴマホ語らば我が身にデジャヴ
  あまちゃん語らば誰もがじぇじぇじぇ
 2行目はついで。考えたのが1月なもので。
 なぞるといっても、父とは同居していたので、阿部寛演じる主人公・良太のような感慨はない。失踪した夫役の加瀬亮が会いに来た妻役の宮﨑あおいに発した残酷な言葉「後悔はしてないんだ」にむしろ近い。低視聴率ドラマの一度かぎりの台詞をひいてみてもわからないな。
………………………………………………………………………………
 父の入院から間もなく、パソコンでアマゾンをのぞいていると、おすすめ商品として、彦根出身のSSW(この略表記になれない世代だが、使ってみた)・徳永憲の2ndアルバム『眠りこんだ冬』(2000年)が表示される。中古が出品されたのだ。7月の当ブログでは「現在入手困難。」としていたもの。うれしい。購入して、久しぶりに徳永憲公式サイトをのぞいてみると、
  「2014年1月7日火曜日
   父が亡くなった。
   はじめは当惑したが、
   今は葬儀もすませ、少しずつ整理できてきた。」
 その前の「2013年12月28日土曜日」の更新では、
  「締め
   更新少なくてすいません。
   そのうち元気になって復活します。」
………………………………………………………………………………
 40代の冬は、あちらもこちらもこんな感じ。
 あつらえたようなアルバムタイトルの『眠りこんだ冬』。ただし、アルバムタイトル曲は、軽快なメロディーに少しばかり不敵な歌詞がのり、パンキッシュな演奏で終わる、タイトルからイメージされるものとは真逆のナンバー。
 4曲目「読書のポーズ」は、本好きは苦笑せざるをえない。
 その一節。
 「ふぁふぁふぁ いーま なにをー 読んでいらーっしゃーるの?」
 答えとして、原曲ではイタロ・カルヴィーノ(イタリアの作家)の名が歌いこまれる。
 私のこの冬について答えるなら、
 「ふぁふぁふぁ イーシイモモコさーん イシイモモコさ~ん~」
 字数がたりないので敬称をつけた。ポーズでなく、実際に読んでしまっているので、石井桃子ネタは次回に続くかもしれない。
………………………………………………………………………………
 なんだかfacebookみたいな近況報告になってしまったので、1週間前に拾った映画のネタをくっつけておく。
 3月22日(土) 草津市にある滋賀県立琵琶湖博物館で行われた日中共同博物館・大学講演会「魚米之郷(ぎょまいのさと)を語る」(入場無料)へ。
 2つのテーマが混在した内容。
1)中国の太湖と洞庭湖の現状と課題について。湖畔の近代化にともなう環境汚染への対策には、琵琶湖の経験が活かせるだろうという話。
2)稲作の起源と養魚の関わりについて。確かに、映し出された長江流域の最古級の田んぼ跡は形も不統一な水溜まりを水路で結んだようなもので、養魚池も兼ねていたように見えなくもない。
 2は、以前に同館で開催されたシンポジウム(2007年にアップした当ブログ「キーワードは『家畜』」参照)で示された中国の「農業生産に家畜(牛・豚・鶏と魚)を複雑に組み込んだシステム」に関する話題の継承。
 聞いていて、昨年8月に京都の映画館で観たワン・ビン監督のドキュメンタリー『三姉妹~雲南の子』(2012年)で印象に残った場面の一つを思い出した。
 撮影地は、雲南省の3000mを超す高地にある村。そこに暮らす10歳・6歳・4歳の三姉妹をカメラは見つめ続ける。ときには走り出した彼女らを追いかける。現金収入を得るために父親は町へ出稼ぎで出てしまっている。母はその前に村を出て行方不明。
 長女のインインは妹たちの世話だけでなく、家畜の世話もしなければならない。豚のエサであるジャガイモをエサ箱の中でふみつけて柔らかくする。人間の主食も新大陸原産のジャガイモなので、入植は時代的にそう古くはないのだろう(清代までに中国東部から漢民族が移民してきた地域だと、映画パンフレットに解説あり)。いわゆる民族誌的な視点では撮られていない。そうした視点で語るには姉妹たちの日常は過酷すぎる。すでに低地への全村移住が決まっている。よかった、よかった。つまり、以下はあえて。
 三姉妹の次女とその従姉だったかが、ヤギの世話をしている。ササが群生している場所に来ると、彼女らは全身で覆いかぶさり頬も手も擦り傷だらけにしながら、ササの幹をしならせる。バサバサバサバサ。すると、低い位置まで降りてきたササの葉をヤギがモシャモシャと食む。なるほど、こんな給餌法(きゅうじほう)が……と感心。
 さて、映画パンフレットに掲載されているインタビューで、監督は次作以降、河口の上海から長江をさかのぼりながら、中国で最もめざましい経済発展をとげた流域の姿を記録したいと述べている。まさに太湖と洞庭湖を含む地域なので期待。

コメントはまだありません

コメントはまだありません。

この投稿へのコメントの RSS フィード。

最近の記事

カテゴリー

ページの上部へ